マンション経営者が気付かない空室の意外な原因
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賃貸マンションは一般的に築年数の経過に伴って入居率や家賃収入が低下するといわれています。この一般論から「空室が多いのは築古マンションだから仕方がない」と空室対策を諦めている賃貸マンション経営者も少なくありません。しかし、築古だからと諦めるのは早計です。築古でも入居率の高い賃貸マンションが少なくないからです。空室の真因はどこにあるのでしょうか。
マンション経営者と入居者の認識ギャップ
築古だから仕方がないと空室対策を諦めている賃貸マンション経営者と入居者との間には、どうやら築年数に対する認識ギャップがあるようです。それをうかがわせる興味深い調査があります。
アットホームが、一人暮らしをしている18-29歳の学生・社会人を対象に、現在住んでいる部屋を探した際のプロセスなどをアンケート調査した「部屋探しのプロセス&マインド 2013年首都圏」(2014年2月発表)によると、まず「現在の部屋を探した際、家賃以外に最初から最後まで変わらずに重視した」のは、学生は「通学時間」がトップ、2位が「最寄駅から近い」、3位が「間取り・広さ」でした。対して社会人は「間取り・広さ」がトップ、2位が「最寄駅から近い」、3位が「通勤時間」でした。
次に「部屋を探した際、家賃以外で妥協したもの」は、学生・社会人とも「築年数」がトップでした。ところが2位は、前項質問の「最後まで変わらずに重視した(=家賃以外では妥協しなかった)」項目で学生、社会人ともトップ3に入っていた「間取り・広さ」になっています。これは「間取り・広さ」を妥協しなかった入居者が多かった半面、妥協した入居者も少なくない事実を示しているものと思われます。
この調査結果から、若い世代の賃貸マンション入居者の多くが築年数は妥協の範囲内、間取り・広さも入居者によっては妥協の範囲内と認識していると思われます。このことは「築古マンションだから」や「間取りが狭いから」は空室の決定的要因ではないことも示しています。
マンション経営者が気付いていない空室要因
築年数の経過とともに空室が増え、家賃を下げざるを得ない賃貸マンションが多いのも事実です。
その本当の原因はどこにあるのでしょうか。
これに関して、不動産業界関係者からは「築古の賃貸マンションは、入居者ニーズを満たしていない物件が多い」との声が聞かれます。この入居者ニーズの大半は設備に関するものです。
例えば、前記アンケート調査の「妥協しなかった設備」の項目では、学生・社会人とも「独立したバス・トイレ」がトップ、2位が「フローリング」、3位が「収納スペースが広い」になっています。このほか、学生・社会人とも「防音」「オートロック」「独立洗面台」「2口以上のコンロ」などが上位を占めています。
空室に悩む賃貸マンション経営者の多くが、これらの設備を備えていないというわけです。製造業もサービス業も定期的な設備更新は生産効率化や集客の基本といわれています。築古で家賃収入が少ないからとの理由で設備更新やリフォームを怠っていると、空室が増えるのは当然といえます。
思い切った最新設備への投資やリフォームで「建物や間取りの古さは妥協の範囲内」と考えている入居希望者に「選ばれる賃貸マンション」にすることが、築古マンションの根本的な空室対策になるのです。