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中古住宅の診断(インスペクション)義務化をはかる宅建業法改正案が国会へ

公開日:2016-04-19 00:00:00.0
宅建業法改正案(宅地建物取引業法の一部を改正する法律案)が2016年2月26日に閣議決定され、開催中の通常国会へ提出されました。国土交通省によると、同法案は中古住宅の住宅診断サービス活用促進による中古住宅取引市場の活性化が目的です。法案が成立すれば、中古住宅取引市場にはどのような影響があるのでしょうか。

注目される法案成立後の住宅診断ガイドライン改訂

宅建業法改正案は、宅地建物取引業者に対し以下の義務を課すのが骨子です。
(1)宅地建物取引業者は中古住宅売買仲介契約の締結時に、住宅診断サービス実施の斡旋事項を記載した書面を売主に交付する一方、買主には住宅診断サービス結果の概要を重要事項として説明し、
(2)売買契約の成立時に契約対象建物の状況を契約当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付する。

国土交通省は、この法改正により住宅品質が担保された中古住宅の供給増をうながし、消費者が安心して中古住宅の取引ができる市場環境の整備をはかるとしています。また、これを中古住宅診断義務化の狙いともしています。

中古住宅診断とは「建物検査(またはインスペクション)」とも呼ばれ、住宅の設計・施工に詳しい建築士などが住宅劣化状況などを検査し、不具合の有無、補修すべき個所と時期などを第三者の立場から判断するサービスのことです。

中古住宅診断サービスは米国で1980年代後半から急速に普及し、現在の普及率は州によって異なりますが、おおむね70~90%に達しています。
一方、我が国で同サービスが始まったのは2000年頃からといわれています。
この頃から同サービスを開始する住宅検査会社、建築事務所、大手不動産の子会社などが現れました。ただ、当時は欠陥中古住宅を購入してしまった消費者からの相談や検査依頼を受け付ける程度で、同サービスを専門的に手掛ける会社はなかったようです。
ところが2006年頃から購入前の中古住宅に対して同サービスを利用する消費者が増え始め、専門的に同サービスを手掛ける会社が増えていったといわれます。
2008年には民間団体の「日本ホームインスペクターズ協会」が設立され、「公認ホームインスペクター(住宅診断士)」という民間資格を作りました。以降、同様の民間資格を作る民間団体が増え、消費者にとってはどの団体の資格を持っている会社のサービスを利用すれば良いのか、かえって分かりにくい状況になっているようです。

実効性が低い住宅診断のガイドライン

我が国の住宅診断サービスは目視検査を基本としていますが、その検査基準と現場に出向く検査員の技術力はサービス会社(インスペクター)ごとにばらばらでした。
そこで国土交通省は、「中古住宅の売買を促進するためには同サービスに対する消費者の信頼性の確保と円滑な普及をはかる必要があり、そのためには同サービスの検査基準を共通化するための指針が必要」と考えて、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定。2013年6月にそれを発表しました。

ところが同ガイドラインは「検査内容として必要十分なものを示すものではなく、適正な検査実施となるよう、住宅診断サービス会社が共通して実施することが望ましいと考えられる最小限の検査項目と検査法を示す」(国土交通省)としているため、「基礎的なインスペクション」(一次的なインスペクション)として、「目視を中心に一般的な計測器(建物の傾きやひび割れの大きさを測る計測器)を用いた計測、触診・打診による非破壊検査」という最低レベルの指針を示しているだけです。

このため不動産業界内では「中古住宅の老朽化判定や品質確保の実効性が低い。このままでは中古住宅診断サービスの普及率が上がらない」との声がかねてからあがっていました。今回の法改正は、こうした実情をふまえたものとみられており、同法案成立後のガイドライン改訂も注目されています。

法改正で期待される中古マンション売主と買主のメリット

国土交通省の「日米の住宅投資額累計と住宅資産額の比較」によれば、米国は住宅投資額累計13.7兆ドルに対して住宅資産額は14.0兆ドルで、住宅資産額、すなわち中古住宅ストック額が住宅投資額を上回っています。これが米国の活発な中古住宅流通の背景といえます。
一方、我が国は住宅投資額累計862.1兆円に対して住宅資産額は343.8兆円しかなく、住宅投資額の6割が無駄遣いとなって消滅しています。
こうした我が国の住宅投資の無駄遣いを解消する上でも、中古住宅診断サービスの普及は差し迫った課題です。

中古住宅診断サービスが普及し、中古住宅の老朽化状況が適切に判定され、その資産価値が適正に評価されるようになれば、「住宅性能に欠陥はないのに、外壁にちょっとしたひび割れがあるなどの理由で塩漬けになっていた物件が売れるようになるなど、中古住宅が飛躍的に流通する可能性が高い」(不動産業界関係者)とみられています。

現行ガイドラインが法改正後、中古住宅取引市場の実態に即して適切に改訂され、それにより中古住宅診断サービスが普及すれば、たとえば「築1年後には10%下落し、築10年で平均24%下落、そして築20年で平均40%下落する」といわれている中古マンション価格が、市場の需給関係に基づく適正価格で取引される可能性が高まります。
買主側も「住んでみなければ分からない」といわれる中古マンションを安心して購入できる環境になるでしょう。

一般には注目度の低い法改正ですが、中古マンションの売主と買主には影響が大きいようです。


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