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高市新政権で不動産市況は変わるのか?

公開日:2026-01-29 00:00:00.0

目次

2025年12月2日

一般社団法人 住宅・不動産総合研究所理事長 不動産エコノミスト

 吉崎 誠二


高市新政権が誕生して1カ月余り。就任早々から前政権時代に決まっていた外交をこなし、矢継ぎ早にさまざまな対策を打ち出すなどしています。期待の表れなのか11月中に報道各社が行った世論調査では、いずれも60%台~70%台の高い内閣支持率となっています。金融市場をみれば、積極的な財政支出・金融緩和の継続を打ち出すことが予想されており、その結果、株高が続いている一方で、円安・債券安となっています。そして、2025年11月21日に高市総理は「総合経済対策」を発表し、その中で広く国民に影響がある物価高対策の具体策を打ち出しました。

物価高対策を打ち出す一方で、金融市場は「今後もインフレが続きそう」との見通しのためか債券安・株高が続いています。このような状況下で不動産市況はどうなるのでしょうか。



【1】新政権の物価高対策



最初に、2025年11月21日に公表された経済対策の中から「物価高対策」の具体策について簡単にまとめておきます(首相官邸ホームページより)。 物価高対策は、家計向けと事業向けに分かれています。


1)物価高対策(家計向け)

家計向けの物価対策の1つ目は、「ガソリンの暫定税率廃止」で、1リットル当たり25.1円の税金がなくなります。1世帯当たり平均で年間約12,000円程度の負担軽減効果を見込んでいます。2つ目は、「電気・ガス代支援」で1~3月の3カ月間で1世帯当たり7,000円程度の負担軽減。3つ目は「所得税、年収の壁見直し」。4つ目は「重点支援地方交付金の拡充」で1世帯当たり平均1万円程度の支援があります。5つ目は「物価高対応子育て応援手当」で子ども1人当たり2万円が支給されます。これらの支援総額は5.1兆円と見積もられています。






2)物価高対策(事業向け)

こちらの対象は、医療機関・介護施設や中小・小規模事業者で、賃上げに取り組む企業向けの支援が中心となっています。




物価(消費者物価指数)の上昇は2022年春ごろから大きく上昇しており、現在も前年同月比2%台後半から3%程度の上昇が続いています。一方、名目賃金は上昇していますが、インフレ率を考慮した実質賃金はマイナス傾向にあります。こうしたことから早急な物価高対応が求められていましたが、今回の対策はこれに呼応する政策の基本方針を示したことになります。

しかし、家計向け物価対策の資金だけでも5.1兆円あり、これだけのお金が市場に投入されるわけですから、結果的に多少の物価高(インフレ)につながることになりそうです。また、新政権の経済対策は、総額で見れば真水を約21兆円投入する対策ですので、インフレの可能性が高くなると思われます。もちろん、インフレ基調は金利上昇や実質賃金の低下など注意が必要な面もありますが、ポジティブに働く要因と言えるでしょう。



【2】好調な株式市場と不動産市況



高市新政権となり、株価は日経平均でみれば5万円を超える水準となってきました。

株高は、株式資産の増大、また配当も増えれば、恩恵を得る方が増えます。株式の利益確定を行えば、その資産は不動産に向かう可能性もあり、不動産市況にはポジティブに働くと思われます。ご承知のとおり、過去を振り返っても、株式市場と不動産市況の動きは(多少の時差はありますが)連動します。



【3】長期国債金利の動向とキャップレート

新政権の経済対策が公表される前後から、新政権の金融政策を見込んでいた長期国債金利は上昇傾向にありました。先に述べた経済対策では国費など(いわゆる真水)は21.3兆円になる見通しですが、これを受けて長期国債金利はさらに上昇基調となりました。2025年11月20日には長期国債金利は1.8%を超える上昇を記録した後、2025年12月2日時点では1.88%まで上昇し、2%が見える水準となってきました。

長期国債金利はリスクフリーレートとして収益物件における「ベース金利」と捉えることが一般的で、これに不動産投資のプレミアム金利を加算して期待利回りが算出されることを考えれば、収益還元法での不動産価格にはネガティブ要因となります。現在の流通しているマンションの一定割合は、投資用としてつまり収益物件として購入される方がいますので、2%を超えるようであればマンション価格にも多少影響が出ると思われます。

2025年11月末に一般財団法人日本不動産研究所より公表された「第53回 不動産投資家調査®(2025年10月現在)」をみれば、賃貸住宅一棟(東京:城南地区)のワンルームタイプのキャップレート(年間純収益÷不動産価格)は3.7%、ファミリータイプは3.8%と半年前と同じ値でした。全国主要都市を見ても、概ね「横ばい」となっています。キャップレートが横ばいという状況は、収益不動産の価格も概ね横ばい状況にあるということになりますが、前述のようにベース金利としての長期国債金利が上昇している中での横ばいは、賃料増などに伴う収益性(=NOI)が上昇していることに他なりません。









では、住宅賃料はこの先伸びるのでしょうか?



【4】住宅賃料はこの先伸びるのか

住宅賃料はここ数年上昇傾向にあります。賃料には遅効性と粘着性という性質がありますが、それが、色濃く出るのが住宅賃料です。東京都の募集家賃指数を見ると2022年頃から上昇傾向にあり、特に2024年以降は大きく伸びました。そして、この先もしばらく上昇しそうです。

しかし、住宅賃料は、普通賃貸借契約の場合、双方合意が必要ですから、オーナーサイドの一存では決められません。入居者サイドに立てば、実質賃金(名目賃金÷インフレ率)は増えておらず(2025年の1月~9月分の実質賃金はマイナス:厚生労働省)、賃料上昇は生活を直撃する傾向となっています。東京都が2025年11月に公表した2024年度の住宅賃料に関する相談件数は、2023年度比で2倍以上となっており、この状況を裏付けするデータとなっています。オーナーサイドに立てば、不動産価格の上昇、還元利回りの上昇可能性を鑑みれば、賃料上昇を望みたいところですが、住宅賃料は賃金の影響を強く受けますので(法人での契約を除けば)、上昇には限界があり、このまま実質賃金の低下が続けば、調整局面を迎える可能性が出てくるでしょう。



【5】円安の進行と不動産市況、建築費



2025年12月2日時点では1ドル=155~6円台、2025年1月には一時1ドル=158円のタイミングもあり、円安傾向が進んでいます。外国人投資家、海外の機関投資家にとっては、買い得感があるものと思われ、こちらはマンション流通市場ではポジティブ要因となるでしょう。また、円安は資材価格上昇につながる可能性があります。建築・建設にかかわる人手不足も顕著なようですから、建築工事費はこの先、一段と上昇するものと思われます。そうなれば、新築分譲マンション価格は、供給サイドに立てば、都市中心部はもとより郊外の物件でも「ある程度高く値付けせざるを得ない」そして「高くても売れそうな物件のみ供給される」という状況となります。そのため、新築マンションは、この先もしばらく、新規供給は少なく、価格は高止まりで供給されることは確実で、こうした流れは、中古マンション市場にとってポジティブに働くでしょう。



【6】引き渡し前の転売規制と外国人規制

政府(地方自治体を含む)は、戦後一貫して、生活拠点である住宅政策に力を入れてきました。広く優良な住宅が国民に行きわたる政策です。先に述べた東京都の「住宅賃料の相談窓口」を設けているのもその一環と言えます。昨今では、「マンションが投資対象となり価格が高くなりすぎている」との声も上がっています。そこで、政府は国外からの取得を含めたマンションの取引実態の調査を指示し、2025年11月25日には国土交通省が実態調査を公表しています。東京23区の大規模新築マンションでは、2024年1~6月で全体の9.9%が購入後1年以内に転売され、この割合は2023年の2倍以上と急増しています。

さらに、業界団体も、対策を講じることになりました。2025年11月25日に大手不動産会社が中心となって組織化されている一般社団法人不動産協会から「分譲マンションの投機的短期転売問題」に関する取り組みが発表されました。「分譲マンションの「投機目的」の短期転売については決して好ましいことではなく、これをできる限り抑制するために何らかの対策が必要という認識」(同協会公表資料)ということでの取り組みとなります。対策の内容は、7月に千代田区が要請したような短期売買の規制ではなく、引き渡し前の転売を規制する内容です。取り組みの内容の柱は3つからなります。



1)1物件あたりの購入戸数を制限し、かつ1回の販売期(次)における登録可能住戸数も同様に制限する。
2)登録(申込)名義にて契約、引き渡し、所有権に関する登記を行うことを徹底する。
3)売買契約締結から引き渡しまでの期間において、売却活動を禁止する。




この規制が導入されることで、「マンション価格は下がる」という声もあれば、「あまり、影響はないのでは?」との声もあるようです(業界関係者へのヒアリング)。

一般的に、このような「規制」はマンション価格に直接影響を及ぼすこともありますが、こうした規制への取り組みが、購入者に心理的な影響を与える可能性は大いにあり得て、その流れがトリガーとなって、価格調整局面へ向かう可能性もあります。この視点からはネガティブ要因と言えそうです。 



【7】まとめと今後の都心マンション市況の見通し

最後に、ここまでの解説から2026年上期のマンション市況の見通しを考えます。新政権になってからの経済変化のそれぞれの要因が、不動産市況に与える影響を列記すれば、以下のようになります。




こうして列記してみれば、それぞれの与える影響には大小がありますが、項目数で見ればポジティブ要因とネガティブ要因が半々となりました。この中で、大きな影響を与えそうなのは、「長期国債金利はどこまで上昇するか」でしょう。この点は注視しておきたいところです。

しかし、マンションという資産の資産維持のベースは、結局のところ「希少性」でしょう。「大規模、集中エリア、独自固有性が少ない」という物件は、「長期国債金利が上昇」して、「実質賃金の低下」が続き、「転売規制」が広まれば苦戦することはさけられず、売り時、買い時の見極めには注意が必要でしょう。



PROFILE

吉崎 誠二 よしざき せいじ



一般社団法人 住宅・不動産総合研究所理事長 不動産エコノミスト

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。株式会社船井総合研究所上席コンサルタントとして活躍後、株式会社ディー・サイン取締役、旧ディー・サイン不動産研究所所長を経て、一般社団法人住宅・不動産総合研究所理事長に就任(現職)。不動産・住宅分野を専門とし、データ分析や市況予測を得意とする。セミナー、講演、TV・ラジオ出演、著書多数。代表著作に「間違いだらけの住まい選び」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」などがある。

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