賃貸マンションの空室対策というと、マンション経営者の多くが男性ということもあり、ついつい男性を前提にした空室対策を考えがちです。しかし、部屋選びの大半は女性主導で行われているのが実情です。ならば空室対策も女性目線で行うのが効果的でしょう。では、女性に選ばれるための賃貸マンション経営をするためには、どのような設備が目玉になるのでしょうか。

賃貸マンションの効果的な空室対策とは

賃貸マンション経営者の多くが、空室対策の設備といえば十人十色の入居者ニーズを平準化したような設備をあれもこれもと考えがちです。そのため全国どこの賃貸マンションにでもある設備しか導入していないという結果になりがちです。

これでは競合マンションとの差別化はできませんし、経営者の入居者に対する熱い思いを具現化することもできません。また、築古賃貸マンションの空室対策も、ともすれば大規模リフォームで設備や間取りを最新のものにといった大袈裟なことを検討しがちです。

しかし、空室対策は「この設備があるからこのマンションに住みたい」と入居希望者の誰かが思ってくれれば、それで目的を達成できうる一面もあります。

そうなれば、十人十色であるはずの入居者ニーズを平準化させたような設備を過不足なく導入する没個性的な対策ではなく、特定の入居希望者のニーズを満たす差別化設備を2点か3点導入した方が効果的だし、設備投資も少額で済みます。

では「特定の入居希望者」とは、どういった入居者層を指すのかが問題になりますが、答えは簡単です。それは「女性層」なのです。

各種の消費動向調査で、消費の主導権は女性が握っている事実が明らかになっています。これは賃貸マンションの部屋選びでも変わりません。不動産仲介会社の営業関係者の多くが「カップルで物件選びに来るお客さんは、女性が決定権を持っているケースが大半」と述べていることからも察することができます。

賃貸マンションでも必須アイテム化してきた浴室換気乾燥機

そこで、女性層にターゲットを絞った設備導入で参考になるのが、全国賃貸住宅新聞社が毎年発表しているアンケート調査「入居者に人気の設備ランキング」です。

これは同社が全国の不動産仲介・管理会社300社以上の回答を集計してランク付けしたもので、不動産仲介現場のリアルな入居者ニーズを表した調査として定評があります。もちろん、女性層のニーズが多く反映されています。

2014年10月に発表された「入居者に人気の設備ランキング2014」によると、「これがあれば『家賃が高くても入居が決まる』設備編」では、単身者向け物件とファミリー向け物件に分けて、それぞれの人気設備がランキングされています。

その中で、目を引く設備が単身者向け物件で4位、ファミリー向け物件で6位にランキングされている「浴室換気乾燥機」です。

この設備は新築マンションで今や定番となりつつある設備ですが、築年数の古い中古マンションではまだまだ珍しい設備です。それだけに賃貸マンションでは差別化要素が強いといわれています。特に洗濯物の屋外干しに抵抗感のある女性には必須アイテムといえるほどの人気があります。

それだけではありません。今では「国民病」とも呼ばれている花粉症対策の一環としても、花粉症に苦しんでいる人たちの間では必須アイテム化しているようです。浴室換気乾燥機は導入コストが多少かかるものの「一点突破の空室対策として有効」と考えられています。

また女性層の関心が最も高いセキュリティ関係では、「エントランスのオートロック」が単身者向け物件で1位、ファミリー向け物件で2位にランキングされています。

オートロックを完備している賃貸マンションは防犯性能をアピールできて、入居希望者にも安心感を与えられます。加えて賃貸マンション自体のグレード感も高まります。

ただし、これは後付けで簡単に設置できるものではないので、中古マンションに導入しようとすると、それなりのリフォーム工事を要するのが経営者にとっては頭の痛いところです。

そこで注目されるのが、単身者向け物件で3位、ファミリー向け物件で4位にランキングされている「ホームセキュリティ」です。

ホームセキュリティは住戸内にセンサーや非常ボタンなどを設置し、異常を感知すると警備員が駆け付ける設備です。これなら中古マンションでも後付けで導入できます。また設備投資も比較的少額で済みます。設備は警備会社からのレンタルが一般的です。エントランスのオートロックに替わる防犯設備として大きな差別化ポイントにできそうです。

このほか、「宅配ボックス」も差別化ポイントになります。

ファミリー向け物件ではランク外の設備ですが、単身者向け物件では7位にランキングされており、独身入居者の強いニーズが考えられます。

独身者の中には、ネット通販が生活に欠かせない買い物手段になっているという人が今では少なくありません。その一方で、その受け取りが悩みの種になっている人も多いといいます。なぜなら、不在の場合には不在通知を受ける度に再配達の依頼をしなければならず、再配達日時には在宅していなければならないからです。

最近ではコンビニ受け取りが普及してきましたが、受け取るためにはコンビニに立ち寄る必要があります。また、かさばる荷物や重い荷物だった場合には店から持ち帰るのに苦労します。これらの不便を解消してくれるのが宅配ボックスなのです。

最近では集合郵便受けを宅配ボックス付きに取り替えたり、あるいは住戸扉の個別郵便受けの下に設置できたりする省スペース型の製品も発売されています。これなら設備投資も少額で済み、入居希望者にはマンションの利便性を強くアピールできます。

空室対策に大きなお金をかけないでも、改善できるポイントはいろいろあります。男性目線から女性目線へのほんのわずかな意識転換と情報収集力。そして、入居者やマンション管理会社の担当者との日頃のコミュニケーションを大切にしていれば、効果的な対策が自ずと浮かび上がってくるのかもしれません。