空き家820万戸に打ち勝つ賃貸マンション経営のポイント

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空き家の戸数が820万戸になり、今や住宅余りの時代になりつつあります。それが賃貸マンションの空室率上昇の一因ともいわれています。そこで今回は、空き家820万戸時代に打ち勝つ賃貸マンションのあり方を探ってみましょう。
賃貸マンション経営者にのしかかる空き家820万戸の圧力
総務省統計局が今年2月に発表した「平成25年住宅・土地統計調査(確報集計)」によれば、2013年10月1日現在の住宅総戸数は6063万戸で、このうち空き家は820万戸、空き家率は13.5%となっています。
空き家戸数も空き家率も過去最高です。また空き家のなかでも、賃貸住宅の空き家戸数は429万戸で、空き家総戸数の52%を占めています。
空き家特別措置法施行の関係で昨年から空き家が社会問題化していますが、空き家の内訳を見ると、賃貸マンション経営者にとっては「賃貸住宅の空き家数429万戸」のほうが深刻な問題かも知れません。
なぜなら賃貸住宅の空き家が全国で429万戸も発生しているということは、入居者のニーズを満たした優良物件は満室経営ができるが、そうでない物件は今後も空室増に悩まされ、場合によっては賃貸マンション経営からの撤退に追い込まれる可能性が高いことを意味しているからです。
これは「物件に投資はしたが、後の運営はすべて管理会社任せ」では経営ができない時代になったといえるでしょう。空き家820万戸の圧力は人の目には見えませんが、空室、家賃、投資利回りなどさまざまな形で賃貸マンション経営者を圧迫してくるリスクとして容易に考えられます。
「部屋探しはネットで」の時代に
賃貸マンション経営の第一歩は入居者募集です。ここでの課題は「客である入居希望者がどんな部屋探しの行動をしているのか」です。これを知らなければ有効な空室対策も立てられないでしょう。
その意味で興味深いのが、リクルート住まいカンパニーが今年7月に発表した「2014年度 賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(首都圏版)」です。
この調査によると「部屋探し時の利用情報源」はパソコンサイトが49.2%、スマートフォンサイト・アプリが29.9%で、両方合わせると79.1%と8割近くにもなっています。
これに対して「不動産会社に直接訪問」は28.7%、「不動産会社の貼紙」は11.5%で、両方合わせても40.2%しかありません。その結果、「部屋探しのために訪問した不動産会社店舗数」は1店舗が最多の42.8%となっています。2店舗は25.9%で、3店舗が12.3%と続いています。4店舗に至っては僅か3.5%という低さです。そして「訪問ゼロ」が4位の12.2%も占めています。
このことは、部屋探しをする入居希望者はパソコンやスマートフォンで希望物件を絞り込み、最終決定や入居契約をする時のみ不動産会社を訪れる効率的な部屋探しをしていることを示しているといえるでしょう。かつての「不動産会社のガラス窓の貼紙を見て、気になる物件があれば店内に入って物件台帳を閲覧」して部屋を探すといった行動や、「不動産屋をハシゴして部屋探し」をするというのは、どうやら過去のものになりつつあるようです。
そのためか、「部屋探しの際に見学した物件数」も3件の19%が最多となっています。以下5件の18%、2件の16.5%、1件の15.2%、4件の13.1%と続き、6~9件に至っては3.8%しかありません。また「見学ゼロ」で決めている入居者は9.5%にものぼっています。
「ネットに物件情報を掲載」だけでは見向きもされない時代
「部屋探しはネットで」が主流化した今日、Webサイトに掲載する不動産情報にも高度でリアルなコンテンツが求められているようです。
「内見動画で希望する内容」は「部屋の中を実際に移動し、動線がわかる動画」が72.6%で1位。以下「リビング、各居室全体を映した動画」が60.7%、「キッチンや水回りの設備を稼働させている動画」が57.2%、「収納スペースの中を映した動画」が52.7%、「最寄り駅から物件までの道順を案内した動画」が50.8%となっています。
また、分譲マンションの新聞折り込み広告を動画化しただけのような「部屋からの眺望を映した動画」、「最寄駅周辺の動画」などのニーズは50%以下の低さです。
これまで、不動産仲介会社の成約率は営業社員の力量次第といわれていました。営業社員のセールストークやフットワークの優劣が不動産仲介会社の営業力の源泉だったわけです。しかし、今後はWebサイトの充実度とリアルさが不動産仲介会社の真の営業力になりそうな勢いです。
そこで最近の不動産情報のポータルサイトで、アクセス率が高いサイトを見てみると「新築・築浅」、「敷金・礼金ゼロ」、「ペット可」、「楽器演奏可」などの検索ワードが定番化しており、賃貸物件で人気のキーワードのようです。
つまり入居者募集においては、これら検索ワードのどれか1つの条件を満たしていると入居希望者の選択物件の1つに入る確率が上がり、どの条件も満たしていない物件は入居希望者の目にとまる機会すらなくなるという仮説が成り立ちます。選択物件に入れてもらうためには、いずれかの人気条件を満たす必要があるのです。
しかし、昨今の入居希望者ニーズに合致した物件情報を自社Webサイトに掲載したり、人気不動産情報ポータルサイトに掲載の依頼をしたりするためには、必然的に手間と経費がかかります。
このため、中にはその手間と経費を省くため、店頭の貼紙情報をWeb化しただけのようなコンテンツでお茶を濁している管理会社も一部にはあるようです。
そこで賃貸マンション経営者が管理会社に入居者募集を依頼する際は、その管理会社がどんなWebサイトで、どんなコンテンツを使って依頼物件の募集をしてくれているのか確認することが重要になります。それ以前に、情報リテラシーが低い管理会社には業務委託しないほうが無難でしょう。
部屋探しの実態調査結果からも推察できるように、空き家の増加を背景に、入居者募集におけるWebサイトの重要度は今後さらに増してゆくものと思われます。入居希望者の部屋探しの行動が一昔前と比べて大きく変化している以上、賃貸マンション経営者もそれに対応した物件情報を提供する行動をとることが重要といえるでしょう。