都心8区の中古住宅マーケットウォッチVol.9

目次
前回の報告に引き続き、直近における都心8区中古マンションの四半期平均販売価格などを見ていきます。
都心8区の㎡あたり販売単価などの推移は?(図1)
都心8区㎡単価(図1)を見ると、港区(182.12万円/㎡)が一番高く、次いで中央区(180.70万円/㎡)が続きます。前回のVol.8では千代田区と中央区の㎡単価の差はほとんどありませんでしたが、2024年第3四半期では、約9万円/㎡の差がつきました。
また対前年の同時期から1年間の変動率を示す「対前年四半期㎡単価変動率(表1)」で見ても直近の2024年第3四半期では、中央区が29.68%と大きく伸びております。逆に低いほうでは千代田区が、-0.15%とマイナスとなっており明暗が分かれました。
なお、変動率の1年間平均(表1)を見てみると、中央区の20.98%、新宿区の10.01%が高く、低いほうからは、千代田区1.59%、渋谷区2.36%と続きます。今回マイナスとなった千代田区においても1年間の平均で見ると上昇はしています。
一方で都心8区の平均販売価格(表2)を見ると、直近2024年第3四半期の数値は、高いほうから、中央区10,824万円、港区9,695万円と続きます。
前述のとおり中央区は、対前年四半期㎡単価変動率が29.68%と上昇の変動幅も大きくなっております。それと平均専有面積(表2)を見てみると、中央区は60.01㎡と他の区と比べて広く、狭いほうからは、千代田区44.40㎡、新宿区49.34㎡の順となっております。
築年(年数)平均は、古いほうから、目黒区33.59年、渋谷区32.33年と続き、逆に新しいほうは、中央区16.12年、千代田区27.35年となり、各区には、それぞれ販売される中古マンションに特徴があることがわかります。
また、中央区は比較的築年数が浅いマンションの取引が多いことが推測されます。そのため、平均販売価格や対前年四半期㎡単価変動率の上昇が大きかったと考えられ、前回(マーケットウォッチVol.8)と同様の傾向が見受けられました。
都心3区(中央区、港区、千代田区)の成約件数-平均成約単価の推移は?(図2)
都心3区においては前回同様、今回も「半年前」の成約件数と成約単価の間に相関関係が見られました。つまり、前々四半期(2024年第1四半期)の成約件数が、その前の四半期(2023年第4四半期)より増加していると、直近の四半期(2024年第3四半期)の成約単価は前四半期より上昇する傾向にあるという見方ができます。直近の2024年第3四半期は、対前四半期比で成約件数はやや減少、成約単価は引き続き上昇しました。
都心3区(中央区、港区、千代田区)の物件ストック数と成約比率は?(図3)
都心3区のストック数と成約比率との関係は時間差(ラグ)なしで、負の相関関係があり、直近の2024年第3四半期は、対前期比でストック件数が下落し、成約比率は13.71%まで上昇しております。
TOPICS
①高層階かつ広めといった特徴のある物件の売れ行きが好調
指定流通機構(レインズ)の港区における成約事例(上期:2024年4月1日~9月30日)において、売買価格2億円以上の成約は75件で、その内訳は、100㎡以上24件、100㎡未満~70㎡以上35件、70㎡未満~50㎡以上16件、50㎡未満の成約はなし、でした。前回のマーケットウォッチVol.8でも触れましたが、広めのタイプや高層階といった特徴のある物件の売れ行きがよいと考えられます。
港区を取り扱う不動産会社からの情報によると、例えば2024年9月に取引された「港区三田地区の専有面積約128㎡最上階のフルリフォーム物件のマンション」は、約3億7,800万円(坪単価971万円)で売買となったようです。その物件と同じマンション内での半年前の取引事例と比較しても専有坪単価で約1.5倍以上の開きがあったという話もあります。
②都心物件で主にパワーカップルが購入可能な 1~2億円の物件の価格上昇が抑制傾向
都心エリアの物件を扱う不動産会社からのヒアリングによると、世帯年収1,500万円以上のパワーカップルがターゲット層となる物件価格1億~2億円の物件は、価格上昇が少し抑制され始めているようだという話があります。金利が上昇し、銀行の審査内容が厳しくなれば、新規の資金調達や返済が難しくなるケースが多くなることも考えられますので、価格上昇の度合いは購入希望者からしても気になるポイントといえます。
ただし、物件価格2億円以上で富裕層のお客さま向けの不動産価格は引き続き底硬い上昇を続けているようです。
まとめ
今回のマーケットウォッチVol.9では、都心8区における対前年四半期変動率において、中央区の販売価格単価は、2024年第1四半期18.77%、第2四半期25.28%、第3四半期29.68%と大幅に上昇しているのに対し、千代田区は、2024年第1四半期5.91%、第2四半-4.59%、第3四半期-0.15%と減少傾向にあり、傾向の違いがより顕著になっていることがわかりました。千代田区の販売した平均専有面積が44.40㎡、中央区が60.01㎡であるところから、他の要因を考えなければ、上記トピックス①で述べたように、都心3区で住戸を探す需要者は、広めの住戸を好むようになってきているのではないか、と推察されます。
年の瀬も迫ってきましたが、来年も景気が上向くように願いたいものです。アメリカはトランプ政権に替わり、ウクライナ情勢、ガザ地区の紛争など海外の動向も気になります。日本の市場動向だけではなく、世界情勢にも目を向けながら、足元の不動産マーケットの動きについて、信頼のできる不動産の専門家にアドバイスを受けつつ、しっかり見ていきましょう。
Writer
村木 信爾 氏
不動産鑑定士、不動産カウンセラー、FRICS、京都大学法学部卒、ワシントン大学MBA。
信託銀行にて、不動産鑑定、仲介等の業務に携わった後、現在、大和不動産鑑定㈱シニアアドバイザー、明治大学ビジネススクール兼任講師(元特任教授)、PROSIL代表。近著に『不動産プロフェッショナル・サービスの理論と実践』(清文社)2022.6刊、がある。