リノベーションも品質保証の時代? 適合リノベーション住宅が2万戸突破

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リノベーション住宅推進協議会が定めたリノベーション品質基準をクリアしたマンションなどの「適合リノベーション住宅」が、このほど2万戸を突破しました。適合リノベーション住宅は2015年度だけで約6000戸に達すると見込まれています。リノベーションも品質保証の時代になりつつあるようです。
「適合リノベーション住宅」とは
近年「リノベーション住宅」への関心が高まっています。しかし、古くからリノベーション住宅が普及していた欧米とは異なり、日本ではまだまだ施工例が少ないこともあって、その定義は曖昧です。「リフォーム」と「リノベーション」の違いもあいまいなまま使われているのが現状です。
そこでリノベーション住宅推進協議会は、消費者が安心してリノベーション住宅に住めるよう、協議会が定めた品質基準を満たした住宅を「適合リノベーション住宅」に認定、「適合状況報告書」を発行しています。つまり、適合リノベーション住宅は「公的な団体が品質保証をしたリノベーション住宅」というわけです。適合リノベーション住宅は建物タイプ別に次の3種類があります。
●R1住宅
分譲マンションの専有部の品質基準を満たしたリノベーション住宅です。給排水管、電気・ガス、防水、下地など13種類を重要インフラに定めた検査基準を設定し、2年以上の品質保証を義務付けています。
●R3住宅
分譲マンション1棟全体の品質基準を満たしたリノベーション住宅です。専有部を対象にした「R1住宅検査基準」に加え、構造(耐震・躯体強度)、維持管理、劣化状況、定期点検などを重視した検査基準を設定し、既存住宅売買瑕疵(かし)保険対象部は5年、それ以外は2年の品質保証を義務付けています。
●R5住宅
戸建て住宅の品質基準を満たしたリノベーション住宅です。内装と住宅設備は「R1住宅検査基準」に準拠しています。構造の劣化状況は「中古住宅適合証明」(フラット35)、既存住宅売買瑕疵保険などの検査基準に準拠しています。
協議会では適合リノベーション住宅認定の申請が出された既存住宅に対し、ホームインスペクター(住宅診断士)などの専門家が建物検査をした上で改修工事を行い、その工事記録を住宅履歴情報として保管する一方、適合状況報告書を発行しています。
リノベーション住宅ならではの魅力とは?
リノベーション住宅は、最近になってなぜ急に脚光を浴びるようになったのでしょうか。
かつて、日本には「家を買うなら新築」という「新築住宅信仰」の時代がありました。新築の戸建て住宅や分譲マンションを買うことが消費者の夢であり、人生の大きな目標だった時代の話です。
しかしその後、家に対する価値観が時代の流れとともに大きく変わり、ライフスタイルも多様化しました。今では「古くても気に入った家を買い、自分の好きなように手を入れて住みたい」と考える消費者が年々増えています。
国も膨大な住宅ストックを有効活用しようと、中古住宅の流通に本格的に取り組むようになりました。こうした状況から、住宅事業関連のさまざまな企業が中古住宅やリノベーション住宅の流通に力を入れ始めるようになり、その流通量も一定のレベルに達してきました。こうしたことから注目が集まるようになってきたのです。
また、リノベーション住宅が脚光を浴びているのは、「リノベーション住宅ならではの魅力」も背景にあるといわれています。一体どんな魅力なのでしょうか。一般的には以下の4つがあるといいます。
●ライフスタイルに合わせた住宅作りができる
リノベーション住宅の最大の魅力は、注文住宅と同じように「住む人のニーズやライフスタイルに合わせた住宅作りが自由自在」という点にあります。
リフォームとは異なり壁、床などの内装をすべて解体し、スケルトン(建物の柱、梁などの構造躯体だけにした状態)あるいはスケルトンに近い状態にしてから改修工事を行えば、一定の制約条件はありますが好きな間取りや内装の住まいが実現できます。また、躯体や住宅設備がどの程度劣化しているのかを正確に検査した上で工事ができるので、配管の取り替え、耐震補強など「築古だから」の不安も解消できます。
●選べる物件数が多い
「物件数の多さ」もリノベーションの魅力です。ストックが豊富な中古住宅なので消費者が住みたい街と周辺環境、広さなど、消費者が求めるさまざまな条件を満たした物件を選べるという選択肢の多さは、新築住宅の比ではありません。
●資産価値の目減りリスクが低い
日本の住宅は、新築時をピークに建物の資産価値(価格)が目減りしてゆくのが普通です。例えば、新築マンションの場合、統計的には築20年頃に資産価値が半値以下に下がり、その後は値下がりが底を打ったかのように、ほぼ横ばいとなっています。リノベーション住宅は、この値下がりが底を打った中古住宅なので、購入後の資産価値の目減りリスクが低くなります。
●物件購入費が安い
新築と比べた物件購入費の安さも魅力になっています。築年数やリノベーションの内容により異なるので断定はできませんが、同一エリアで似た条件の物件であれば、一般的に新築よりリノベーション住宅の方が価格は20~30%安いといわれています。
人気が高まる「ワンストップ型リノベーション」
「中古マンションを買ってリノベーション」を検討している消費者にとって、リノベーションをどの会社に依頼すればよいかの判断が大きな悩みになります。そんな消費者の間で人気が高まっているのがリノベーション会社の「ワンストップ型リノベーションサービス」です。
これは1つの会社が中古物件探しからリノベーション工事、さらには資金計画作成や住宅ローン申し込みまで一気通貫でサポートするサービスのことです。従来は「中古物件探し」と購入後の「リノベーション」を別々の会社に依頼するしかありませんでした。その場合には以下のような不便さがありました。
●リノベーション費用が足りない
一般的に、住宅購入経験のない消費者が中古マンションを購入する場合、購入後のリノベーション費用を試算し、総予算を把握し、適切な住宅ローンを選択するのは大変難しいことです。その結果、物件購入後にリノベーションをしようとしても、「費用が足りない」ケースがしばしば発生します。しかし、この時点で物件購入のキャンセルはできないため、仕方なくリノベーションを諦めることになります。
●思い通りのリノベーションができない
リノベーションの最大の魅力は「自分たちのニーズやライフスタイルを実現できる住宅作り」にあります。ところが、建物の構造やマンション管理規約などの制限で、思い通りのリノベーションができないケースもあります。例えば、中古マンションを内覧して「キッチンの位置を変える」「柱や壁を取り払って広々とした間取りにする」など、変更を行えば自分好みになると思って物件を購入しても、購入後に配管や構造を調査してみるとそれができないというケースは少なくありません。
●工程の進捗調整が難しい
「中古マンションを買ってリノベーションする」場合、基本的に次の3つの工程が発生し、それぞれ個別の会社と進捗調整をしなければなりません。
1.物件探し(不動産仲介会社)
2.リノベーション工事(建築設計・工事会社)
3.住宅ローン申し込み(金融機関)
このため、最低3社の担当者とタイミングよく進捗調整を進める必要があります。このタイミング調整があわないと、「決済の遅延」や「物件引渡しからリノベーション工事着工までの期間が空いてしまう」などの事態になり、家賃とローンの二重払いになったり、物件購入費とリノベーション費とを別々に借り入れしなければならなくなったりします。
このような不便さを解決できるのが「ワンストップ型」のサービスです。そのため、人気が高まっているわけです。そして、一般的に以下のようなメリットがあるといいます。
●総予算から「物件購入とリノベーション」を計画
消費者の要望を整理した上で「物件購入とリノベーション」の総予算を割り出し、物件購入とリノベーションそれぞれにいくら費用がかかるのかを消費者に提案し、了解を得た上で物件探しに入ります。そのため、物件購入後にリノベーション費が足りなくなるケースはまれです。
●物件購入前に建築専門家が建物検査
物件を探し出すと購入契約までの間に顧客の要望通りのリフォーム工事ができるのか否かを調査します。前述のような建物の構造やマンション管理規約などの制限についての検査はもちろん、必要に応じて配管等の劣化診断、耐震診断なども行った上で物件購入の可否を判断します。
●「物件購入+リノベーション一体型ローン」を利用しやすい
「中古マンションを買ってリノベーションする」場合は「物件購入+リノベーション一体型ローン」を利用するケースが多いといわれています。しかし、通常の住宅ローンに比べ仕組みが複雑なので、一般消費者にとっては利用しにくい面があります。その点でこの一体型ローンに精通している上、総予算をベースにローンを組むので、資金不足が起こることは滅多にありません。
「ワンストップ型」を利用するメリットはこれだけではありません。通常「コーディネーター」と呼ばれる専任社員がいます。この社員が消費者の窓口役となり、社内の各部署と連携しながら一気通貫のサービスを提供しています。そのため、消費者はストレスなく「中古マンションを買ってリノベーション」ができます。こうした動きが出てきたことで、日本でもリノベーションの品質保証と「ワンストップ型」が普及に向かいつつあるようです。