不動産の資産組み替えを考える

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ゆとりある老後生活を送るには、生活費として月額約35万が必要といわれています(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2013年度)。その内の一部が公的年金等で賄われるとしても、残りの不足分は貯蓄を切り崩すしかなく、金融機関での現在の利率を考えると、資金面に不安を感じている方もいらっしゃると思います。このような将来への不安を解消する方法の一つに、「資産の組み替え」があります。
資産組み替えとは?
資産の組み替えとは、賃貸目的でマンションを購入するなど、資産を現金から収益性の高い不動産などにすることを言います。貸し出すことで不動産収入が見込め、さらに収益用不動産で期待できる利回りは預貯金より高い傾向があり、資産を増やすために、不動産投資を選択肢の一つとしてとらえる考えが広まってきました。
相続税対策も大きなメリット
不動産投資は、資産増だけでなく、相続税の節税対策ができることもメリットです。例えば、現金1億円を保有していた場合、相続税を計算する基となる課税価格(相続税評価額)は1億円のままです。それでは1億円の賃貸不動産(建物5,000万、土地5,000万)の場合、相続税評価額はどうなるでしょうか? 賃貸不動産の相続税評価額は、以下の方法で計算します。
建物:固定資産税評価額×(1-借家権割合(i))
土地:路線価×(1-借家権割合×借地権割合(ii))
ケースにより異なりますが、固定資産税評価額は新築価格の50%~70%程度、路線価は公示価格の80%程度です。そこで、固定資産税評価額を新築価格の50%、路線価を時価の80%、借家権割合を30%、借地権割合を60%として賃貸不動産の相続税評価額を算定すると以下のようになります。
建物:5,000万×50%×(1-30%)=1,750万
土地:5,000万×80%×(1-30%×60%)=3,280万
合計:5,030万
このケースでは、現金では1億円だった相続税評価額が、資産の組み替えで約半分の5,030万に減少させることができるのです。
さらに、2015年より相続税の改正で、遺産から差し引くことができる基礎控除額が現状の6割に引き下げられます。相続税の申告が必要になるかどうかのボーダーラインが下がり、東京都内では申告対象となる被相続人が約2倍になると予想されています。これまで以上に相続税対策が必要となり、その対策として、不動産への資産組み替えは有効です。
家賃滞納などのリスクも考えて
資産の組み替えにはこのようなメリットが期待できます。その一方、賃貸不動産を購入することは不動産賃貸業を行うことですので、リスクもあります。「家賃の滞納が生じる」「空室が発生する」などの可能性があります。さらに、急に現金が必要になったとしても、不動産を売却して現金化するには時間がかかります。これらを踏まえた上で、「資産の組み替え」を検討し、バランスよく運用することが大切ではないでしょうか?
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(i)家屋を貸している場合に、通常の家屋の評価額に対する貸家としての評価額の割合のこと。30%に全国で統一されている。
(ii)土地を貸している場合に、土地の評価額に対する借地としての評価額の割合のこと。東京都は40~60%で定められている。