都心6区の中古住宅マーケットウオッチVol.2

目次
前回の報告に引き続き、直近1年間の都心6区中古マンションの、四半期平均販売価格を見ていきます。
「都心6区販売価格(図1)」の推移は?
2022年前半(2022年1月-3月、4月-6月)の動きは、全般にやや弱含みで推移したのに対し、2022年後半(2022年7月-9月、10月-12月)は、港区がほぼ横ばいである以外は、全般的に順調に上昇を続けています。
あるマーケット関係者は、この傾向について若干首を傾げながら、「なんとなく良いマーケット」といった表現を使っています。いわゆるパワーカップルと言われる共働き世帯がペアローンを組んで、低金利を武器に1億円に近づくような中古マンションを都心で購入しているという動きだけでは説明できません。どうも3億円から5億円クラスのマンションをローンなしで購入する富裕層や外国人投資家の存在が大きいようです。
特に再開発される地域は地価もマンション価格も底堅い強い動きがあります。例えば、港区三田に三井不動産と三菱地所が開発した総戸数1002戸2025年完成予定の三田ガーデンヒルズという、平均価格3億8000万円台の新築の高価格帯マンションがありますが、この売り出しがアナウンスされたことは、近隣の三田2丁目にあるパークマンション三田綱町ザフォレストという11階建て築7年の中古マンションの販売価格の上昇に影響を与えた一つの要素であると考えられます。このマンションの2階の売買価格は、2022年4月の取引事例では、専有面積(壁芯)㎡あたり287万円だったものが、2022年10月には、面積・方位は違うものの、同階数で11%上がって、㎡あたり319万円で取引されました。この物件も、総額2億円台から5億円台のマンションです。
パークマンション三田綱町ザフォレスト
「都心3区(中央区・港区・千代田区)の成約件数成約単価(図2)」の推移は?
都心3区においては前回同様、今回も半年前の件数と成約単価の間に相関関係が見られ、件数が増えていくと半年後には、成約単価も影響を受けて大きくなるという見方ができます。件数は2022年第2四半期よりやや落ち込み、一方、平均単価は増加率が大きくなっています。グラフには表れていませんが、2022年第3、第4四半期の件数はまた伸びてきていますので、他の要素を考えなければ、半年後の報告時には、平均単価は引き続き伸びているものと予測されます。
都心3区の物件ストック数と成約比率は?
都心3区のストック数と成約比率との関係は時間差(ラグ)なしで、負の相関関係があり、2022年第1期から3期までは、ほぼ横ばいです。
まとめ
昨年末から、住宅ローン金利が徐々に上がってきていますが、金利が上がれば、ローンで買える物件価格の限度額は下がるため、パワーカップルが買える物件の価格は下がるでしょう。しかし、円安を背景とする外国人投資家にとっては、まだ割安感があるため人気が高く、金利の上昇にも関わらず、「なんとなく良いマーケット」を支えて行くのではないかと思われます。どちらが強く出るか現時点での予測は難しいため、最新情報はエリアに精通した不動産のプロフェッショナルに相談して入手するのが良いでしょう。
今後も定期的にマーケットレポートを更新していきます。次回も今回のまとめと比較し最新の市況動向を読み解いていきます。
Writer
村木 信爾 氏
不動産鑑定士、不動産カウンセラー、FRICS、京都大学法学部卒、ワシントン大学MBA。信託銀行にて、不動産鑑定、仲介等の業務に携わった後、現在、大和不動産鑑定㈱シニアアドバイザー、明治大学ビジネススクール兼任講師(元特任教授)、PROSIL代表。近著に『不動産プロフェッショナル・サービスの理論と実践』(清文社)2022.6刊、がある。