2026年前半の都心マンション市況予測と仲介会社の賢い選び方
目次
2026年3月19日
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所理事長 不動産エコノミスト
吉崎 誠二
都心の中古マンション価格は引き続き最高水準で推移していますが、レインズデータなどを見れば在庫数も増えており、2022-2025年のような右肩上がりの市況とは異なる市場構造へと変わりつつあります。このような状況下では、「今は買い時なのか」あるいは「今は売り時なのか」、そう悩む人が増えているようです。本稿では、最新データに基づいて2026年前半の市況の見通しをお伝えしたのちに、購入検討者・売却検討者それぞれにとっての「賢い意思決定」について考察してみたいと思います。
※1:不動産流通標準情報システム(REINS)に登録された情報のうち、公益財団法人 東日本不動産流通機構が管轄するエリアの売出や成約のデータ
【1】マンション価格は最高値が続いている
不動産経済研究所のデータ(2026年2月26日公表)によると、2025年の首都圏新築マンション平均価格は前年比17.4%増の9,182万円で、㎡単価は139.2万円と最高値更新となりました。これを東京23区に限れば、平均価格1億3,613万円で前年比21.8%の増となっています。それにつられるように、首都圏の中古マンション価格も引き続き上昇傾向にあります。
しかし、下のグラフを見れば中古市場の「二極化」も鮮明になってきたことが分かります。
2025年の東京23区の中古マンション70㎡換算価格は1億393万円となり、前年比+34.6%の大きな伸びを記録しています(東京カンテイデータ)。一方で埼玉県・千葉県の中古マンション価格の上昇率はわずか+3%台にとどまっており、格差が明確になっています。
【2】2026年も新築マンション供給戸数は低水準が続く
新築マンション志向の強かった日本では、新築マンション価格と中古マンション価格には一定の価格差がありました。しかし近年は、新築マンション価格の高騰に連動するかのように中古マンション価格も上昇が続いてきました。中古マンションの価格高騰が続いている背景の一つは、新築マンションの供給数が少ないことが挙げられます。さらに新築マンション価格が上昇し続けたことから、収入面で新築から中古へとシフトする層が増えてきた状況があります。特にパワーカップルなど高収入世帯では、新築に代わる選択肢として交通利便性や人気の高い中古マンションを選ぶケースが増え、需要が特定エリアに集中し、希少性の高い物件を中心に中古マンションの価格上昇が進む、という構造が形成されてきました。
なお、新築マンションの供給数が少ない傾向はまだまだ続きそうです。不動産経済研究所の予測では、2026年の首都圏新築マンション供給戸数は約2万3,000戸と、2025年より多少増えそうですが、それでも過去最低圏の水準になる見通しです。特に東京23区では2025年比で5.9%のマイナスという見通しです。デベロッパー各社は用地取得の難航が続いていることに加えて、売れ残りリスクへの警戒から、供給減少は仕方のないことと思われます。
経済学の基本に立ち返れば、価格は需要と供給のバランスで決まります。これは、不動産という資産の価格も同じです。現状は「新築物件における供給制約が強い=供給量が少ない」状況が続いており、これが中古マンション価格の高止まりの一因となっていると言えます。
【3】建築コストは高止まりで、たとえ市況が悪化しても安くできない?
建築工事費は、2020年比で2割以上高い水準が続いていますが、3月初旬からのエネルギー価格の急上昇が追加的なコスト上昇圧力となることは確実でしょう。鉄骨・鉄筋などの製造コスト、輸送・物流コスト、現場の重機燃料費はいずれもエネルギー価格に連動します。
また地価の上昇も続いており、マンション適地が少なくなっていることから入札価格が上がりそうです。さらに施工を担う職人の人件費は人手不足が続いており高騰しています。このように原価上昇による新築物件価格上昇圧力は今後も続く見通しです。
このうち、仮に市況が悪化しても、下がる可能性があるのは地価だけで、今のような状況ならば他の要因は下がることはしばらくないでしょう。つまり、たとえ不動産市況が悪化しても新築マンション価格はそれほど下がらないものと思われます。これも、中古マンション価格が高止まりしている要因の一つです。
しかし2026年はやや変化が起こりそうです。需要サイドに立てば、「価格の高止まりによる懸念=買い控え」に加えて「金利上昇=支払総額の増加」という重大な要因が加わってきました。需給均衡が崩れれば、エリアによっては価格調整が起きうる可能性があります。
【4】金利の見通し
日本銀行は、2025年12月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%程度に引き上げました。これは約30年ぶりの高水準です。2024年3月のマイナス金利政策解除から数えると、わずか2年足らずで3回の利上げが実施されたことになります。
消費者物価指数は2026年1月分では生鮮食料品を除いたコア指数で前年同月比プラス2.0%と2%台の伸びが続いています。また、賃金の上昇も顕著であり、政策金利を上げる材料が整いつつあることから、多くのエコノミストが2026年中(12月まで)に1.25%に上がることを予想しています。また、固定金利に影響する長期国債金利(10年物国債利回り)も2026年3月9日時点では、2.2%程度で推移しており、固定型の住宅ローン金利も上昇傾向にあります。2026年は、固定・変動住宅ローンともに、さらに金利が上がる可能性が高いでしょう。金利の上昇幅は僅かであっても、政策金利が1%を超えることは、心理的な影響が大きく、中古マンションの取引価格に多少影響は出ることと思います。
【5】投資目的の購入減少
右肩上がりのマンション市況を牽引してきた要因の1つに投資目的の購入者の存在があります。
新規供給が少ない中で需要が見込める物件は値上がり期待があり、転売を狙っての購入です。売却時の価格は当然、購入金額より高く売り出されることになり、これまでは、このサイクルでの価格上昇が見られました。国内投資家に加えて円安背景に伴う外国人投資家も増え、新築マンションだけでなく、値上がり期待のある中古マンションを購入しており、こうした存在が価格上昇の一翼を担っていました。
しかし、マンション価格上昇に格差が見え始め、リスクを感じ始めた投資家の中には、新規購入に際し慎重姿勢を示すような状況となってきました。よほど希少性のある新築、中古物件以外は手を出さなくなっており、冒頭に述べたようにマンション市況の二極化をさらに進める動きとなっています。
市況から見れば、2026年のマンション市況は、全体感としては好況が続くものの、都心エリアの希少性が高い物件などの「まだまだ価格上昇するエリア・物件」と郊外・都心問わず一定期間に大量のマンション供給があったエリアの物件などの「価格調整局面に入るエリア・物件」がはっきりするものと予想されます。
このように、単一な状況でなくなってきている市況下での「購入」や「売却」では、慎重かつ「丁寧な」対応が求められそうです、売買をサポートするパートナーとしての不動産仲介会社選びが重要になるということです。
【6】不動産仲介会社の選び方
言うまでもありませんが、マンションを売却・購入する際には、「仲介会社選び」そして「担当者との相性」が成果を大きく左右します。
価格交渉・物件情報の入手速度・契約時におけるリスク管理など、取引の最終結果の多くは仲介会社の力量と、顧客との相性によって決まります。しかし、この点については、一般的にはマンション売却・購入において軽視されがちです。「どこに頼むか」の判断は容易ではありません。大手仲介会社がいいのか、地域密着型の企業がいいのか、なかなか難しい判断です。
大手仲介会社は広告力・情報網・ブランド力(=信頼性)という点で強みを持ちます。特に売却局面では、購入候補者へのリーチが成約速度と売却価格に直結するため、大手のネットワークは有利に働きます。一方、購入局面でも大手仲介会社の優位性は変わりませんが、その一方で「エリアに精通した地域密着型の仲介会社」が有効に機能するケースもあります。地元の開発情報や売り出し予定の未公開物件情報は、地域との関係性が深い仲介会社に集まりやすいと考えられます。
【7】大手不動産流通企業の総合力
大手仲介会社の場合は、売買仲介だけでなく、不動産関連領域における賃貸やリフォームなどの幅広いサービスを展開しており、自社単独またはグループ会社内で多様な顧客ニーズに対応する体制を整えています。また、全国主要都市に店舗展開を行っている企業が多く、広範なネットワークを有している点も特徴です。
近年では、コンプライアンスの徹底はもちろんのこと、宅地建物取引士以外の資格取得など営業担当者の質の向上に力を入れ、お客さまからの信頼確保に努めている企業も見られます。
【8】不動産仲介会社選びで気をつけたいこと
まず、売却時における、仲介会社を選ぶ際に気を付けておきたいこととしては、他社に比べて異様に高い売却査定金額を提示する企業があります。「わが社に任せてもらえれば、高く売却できます」ということで、専任媒介契約(売却を一つの仲介会社のみに依頼する契約)が欲しいということになりますが、この高値に対して十分な根拠が示されていない場合は避けた方が無難と言えるでしょう。
少し前までは、右肩上がりの市況でしたので、強気価格提案での売却活動もできましたが、昨今は都心エリアにおいても、前述のように不安定要素の顕在化などから、根拠の乏しい強気な価格設定は避けた方が無難な状況と言えます。その点では、過去の販売価格・成約価格などのデータを踏まえた「マーケット分析」をしっかりと行い、マーケットの動向も含めて価格提案をしてくれる仲介会社だと安心できます。
また、「物件の囲い込み」にも気を付けたいものです。囲い込みとは、依頼を受けた仲介会社が故意に物件の取引情報を隠し、売主と買主の双方から仲介手数料を得る「両手取引」を優先するあまり、他社からの紹介を意図的に妨げ、自社で買主を見つけようとする行為です。さらに買主だけの手数料を確実に狙い、売主に仲介手数料0%などを併せて提案する場合もあります。こうした場合、売主にとって買主が見つからず売却期間の長期化や売却価格の下押しにつながる恐れがあります。「専任媒介契約」を締結した場合でも、依頼会社のホームページはもちろんのこと、レインズ(不動産流通標準情報システム)への登録状況やSUUMOやHOME‘Sなどの各ポータルサイトなどに情報が適切に公開されているかチェックすることが重要です。
次に、購入時ですが、親身になって求めている物件を探してくれるかどうかが、最初のポイントです。そして、特に購入時には、仲介会社のブランドや実績だけでなく、「担当者個人との相性」は成果に大きな影響があります。
購入経験者の声として、満足度の高い取引においては「担当者が親身になって対応してくれた」「常に自分の立場で考えてくれた」という声が多く挙がっています。逆に、担当者からの連絡が遅かったり、説明が不十分だったりといったコミュニケーション上の摩擦が、取引の遅延や不満につながるケースも少なくありません。
相性の見極めは、初回面談で判断できることが多いと思います。担当者が「売るための説明」に終始するのか、「顧客にとって最善の判断を支援する」スタンスに立ってくれているのかなど、初回の面談で概ね見極めることができます。
【9】「待つコスト」の計算も忘れずに
最後に、購入検討の方の中には、「いつか価格が下がるはず」という期待で購入を先延ばしにする方も多いと思います。しかし、これは行動経済学でいう「現状維持バイアス」の典型例であり、慎重に検討してほしいと思います。
もし、価格が下落しない場合、待機期間中の家賃が積み上がります。たとえば、家賃が月30万円の賃貸に3年間住み続けた場合、累計支出は家賃で1,080万円になります。これは将来想定される値下がり幅を上回る可能性も十分にあります。「価格が下がるかもしれない」という不確実な期待と、今買えば回避できる「家賃という確定した機会費用」の確実性を天秤にかけることこそが、合理的な意思決定と言えるのではないでしょうか。
PROFILE
吉崎 誠二 よしざき せいじ
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所理事長 不動産エコノミスト
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。株式会社船井総合研究所上席コンサルタントとして活躍後、株式会社ディー・サイン取締役、旧ディー・サイン不動産研究所所長を経て、一般社団法人住宅・不動産総合研究所理事長に就任(現職)。不動産・住宅分野を専門とし、データ分析や市況予測を得意とする。セミナー、講演、TV・ラジオ出演、著書多数。代表著作に「間違いだらけの住まい選び」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」などがある。


