経営的視点からみた中古マンションの優位性

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中古住宅は新築よりも安いことが魅力といわれています。中でもマンションでは「マンションを買うなら中古」という人が増加しています。「中古は老朽」の負のイメージが薄れ、物件価格が手ごろ、選択肢が多い、自分の好みに合わせてリフォームできるなど、「中古ならではの魅力」を評価する人が増えてきたのが理由にあるといわれています。そして、その背景には次のような社会的変化もあるようです。
高まる中古マンション人気
総務省が今年2月に発表した「平成25年住宅・土地統計調査(全国編確報)」によると、2013年10月1日現在の総住宅戸数は約6,063万戸、総世帯数は約5,245万世帯となっています。つまり、住宅戸数が世帯数を818万戸も上回っているのです。その影響もあるのか、空き家戸数は820万戸に達し、空き家率(総住宅戸数に占める空き家率)は13.5%に達しています。
また、マンションストック(既築マンション戸数)も2013年末現在、約601万戸(国土交通省調べ)に上り、総住宅戸数の約10%を占めるボリュームになっています。
つまり、日本は完全な「住宅余り社会」。別の見方をすれば「住まいは、より取り見取りの時代」といえます。こうした社会的変化が「マンションを買うなら中古」の潮流を生み出したとみられています。
中古マンションの最大の特徴は新築より物件価格が安いことです。一般に同一エリアで同一の広さのマンションを比較すると、中古は新築より3~4割安といわれています。
例えば3,000万円の購入資金があれば、中古なら新築より3~4割広いマンションやグレードの高いマンションを買えるわけです。これがマンション選択肢を多くしています。
しかも中古なら、実質的に青田買いとなる新築と異なり、現物を比較・確認しながら物件選びできる利点もあります。こうした利点も「安、近、利(安くて、駅に近くて、利便性がよい)」のマンションに住めるなら、新築にはこだわらないと考える購入者が増えている要因とみられています。
中古マンションの意外な価値
最近は「中古マンションは新築マンションに比べ優位性がある」ともいわれています。その優位性は、会社経営的な視点でみると、明らかになります。ポイントは「債務」と「資産価値」です。具体的に解説しましょう。
●中古マンションは債務超過リスクが低い
まず、債務の面からみた場合です。新築マンションの購入に際しては住宅ローンを組むのが一般的です。
この状況を企業の財務分析になぞらえると、新築マンション購入者は負債を負って資産を獲得したことになります。しかも「資産の部」の大半は新築マンションが占めているので、その新築マンション資産価値は、時価会計の原則に則り毎年目減りさせなければなりません。
ということは、一定期間経過後は負債額(ローン残高)が資産額(マンション時価額)を上回る債務超過に陥るリスクが高いことになります。これは、例えば「ローン残高が3,000万円あるが、マンションは2,500万円でしか売れない」といった状況です。
一方、中古マンションは新築マンションに比べ債務超過に陥るリスクが著しく低いのが特徴です。
なぜなら、中古マンションの購入でローンを組む場合、新築に比べ、借入額が少なくなる為、購入者のローン支払いには余裕があります。
また、資産の部になる中古マンションの資産価値は、事前に減価された状態で資産参入されるので、時価会計に則った資産の目減りも新築に比べるとずっと小さくなります。したがって、負債額が資産額を上回るリスクも小さくなります。さらに、中古マンションの場合はリスク分散ができるので、これも債務超過の回避に繋がります。
新築マンション購入者の大半は、住宅ローンの支払いがあるため資金的な余裕が乏しいのが通常といえます。これを投資的にみると、新築マンション購入者はそのマンションのローン支払いに追われているので、ローリスク・ハイリターンの物件に追加投資する「機会利益」を得にくい状態になります。
その結果、資産ポートフォリオ構築によるリスク分散を図るのが困難になり、現状のリスク(ローン支払い)に対しても脆弱な財務体質になりがちです。対して、中古マンション購入者は資金的な余裕があるので、追加投資で資産ポートフォリオ構築によるリスク分散も容易になります。
●「すでに存在している価値」を獲得できる中古マンション
次に、資産価値でみてみましょう。新築マンションの資産価値には「不確実性」が伴います。
新築マンションの場合、購入契約をする時期と入居する時期、住宅ローンを支払い終える時期など、時期的なズレが生じるステップがいくつもあります。そのズレの間には景気変動、金利変動、物件立地環境の変化など様々な不確実性が存在します。そして、この不確実性に伴うリスクは購入者が当然負うことになります。
新築マンションの資産価値には「未知数」も伴います。
いうまでもなくマンションの資産価値はヴィンテージマンションに象徴されるように、地域社会の文化や歴史に溶け込んだ居住環境、入居者の高度なコミュニティ、高品質な管理、満足度の高い居住性などにより形成されます。
ところが、新築マンションの場合はこれらの形成要因がすべて未知数です。これは「資産価値が維持できるか否かは長く住んでみなければ分からない」という不確実性ともいえます。
つまり、新築マンションの場合は居住性能、交通の便、周辺施設などの機能性・立地性・経済性は購入前にある程度確認できても、不確実性や未知数は事前に確認するすべがありません。
一方、中古マンションの場合は、機能性・立地性・経済性はもとより不確実性や未知数も購入前の確認が可能です。なぜなら「すでに存在している」物件だからです。
したがって、中古マンションの購入は、単に手ごろ価格の便利な住まいを購入するにとどまらず、マンションの資産価値を購入する行為にも繋がります。これも中古マンションならでは物件価値といえるかもしれません。
近い将来は中古マンションの適正評価基準も
中古マンションにはこうした意外な価値もありますが、当然デメリットもあります。しばしば指摘されるのが「修繕費がどれだけかかるのか分からない」など、価値評価の不透明さに関するデメリットです。これは、中古マンション固有のものではなく、中古住宅すべてに共通するデメリットといえます。
そこで、国土交通省は有識者による「中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会」を設置し、主に中古戸建て住宅の建物評価の改善策を検討してきました。同省はその結果を2014年3月に「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」として発表しています。
指針では、「使用価値」(人が居住するという住宅本来の機能的価値)を評価対象とし、個々の中古住宅の状態に応じて使用価値を把握し、減価修正するための評価法の確立を目指しています。今年以降は、中古住宅評価手法確立に向けた実務的作業が行われるとみられています。
今後、客観的で適正な中古マンションの評価基準や保証が不動産市場に定着すれば、「マンションを買うなら中古」の流れが加速し、購入者も自分の希望に合ったマンションを探しやすくなるでしょう。