増加に向かう2015年度の民間住宅建設投資

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建設経済研究所と経済調査会経済調査研究所はこのほど、「建設経済モデルによる建設投資の見通し―2015年4月」(以下、見通し)を発表しました。
「建設経済モデル」とは、建設投資活動を需要動向、金利などと関連づけた方程式によりマクロ的な景気動向と整合する形で建設投資を予測するマクロ計量経済モデルのことです。金融財政政策や海外景気の変動などが、建設投資活動にどのように波及するかを計算し、逆に建設投資で景気がどのように変動するかの予測が可能といわれています。今回発表の「見通し」は、これに基づく2014~15年度の年度別・四半期別建設経済の予測結果となっています。
2015年度の住宅建設はV字回復へ
このリポートでは、民間建設投資の住宅投資は、2014年度は消費増税前の駆け込み需要の反動により前年度比8.8%減の14兆3,600億円、住宅着工戸数については同11%減の87.9万戸と予測しています。しかし、2015年度は前年度の需要反動減からの回復と市場活性化策により前年度比3.7%増の14兆8,900億円にV字回復すると予測しています。それに伴い、住宅着工戸数も同4.4%増の91.7万戸に回復すると予測しています。
民間住宅建設投資増加の背景
2009年夏以降、回復の兆しが見えていた住宅着工戸数は、2011年3月の東日本大震災の復興需要を経て本格的に回復してきました。2013年度は2014年4月の消費増税前の駆け込み需要により98.7万戸にまで増加しましたが、2014年度は2014年4月~2015年2月の前年同期比で11.7%の減少に転じました。
これは、消費増税による持家の駆け込み需要の反動減と分譲マンションの建築費上昇などによる着工減が要因といわれています。そんな中で、2015年度の住宅建設投資がV字回復の兆しを見せているのは、今年10月に予定されていた消費増税が延期され、駆け込み反動減要因が消滅したことに加え、省エネ住宅ポイント制度など国の住宅市場活性化策により、特に持家と分譲マンションの着工が増加しているからとみられています。
さらに、団塊ジュニアが住宅取得中核層に達していることや、都市部への人口流入が加速していることも、住宅建設投資を押し上げていると見られています。そこで「見通し」は、次のような個別予測も行っています。
●戸建て
持家は先行指標であるハウスメーカー受注速報の大手5社の平均着工戸数が2014年9月までほぼ前年同月比約20%の落ち込みが続いていましたが、10月以降は持ち直し、2015年3月は前年同月比9.6%増になっています。今後は省エネ住宅ポイントなどの持家建設刺激策による着工戸数増加が見込まれています。
●分譲マンション
分譲マンションは、2015年1~2月の首都圏・近畿圏合計の販売戸数が前年同期比で9.3%増で、契約率は好調の目安である70%を超える水準で推移し、在庫数も大きな積み増し状況がみられません。着工戸数も2014年10月~2015年2月は前年同期比3.4%増と回復基調にあります。「見通し」はこれらの要因分析から、2015年度の分譲マンション着工戸数は前年度比2.6%増の24.3万戸と予測しています。
●賃貸住宅
賃貸住宅は2015年1月の相続増税の節税対策としての建設投資と、サービス付き高齢者向け住宅などの投資が継続しています。ハウスメーカー受注速報の大手3社の平均着工戸数は2014年10月~2015年3月で前年同月比10.4~16.3%増と好調を維持しています。2015年度下期は相続増税の節税対策の影響は徐々に減少してゆくと予想されてはいますが、当面は底堅く推移するとみられています。このため「見通し」は、2015年度の着工戸数は前年度比4.1%減の34.2万戸で着地すると予測しています。