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国土交通省、中古マンションなどの売買透明化に向けた不動産総合データベースの試行運用を開始

公開日:2015-08-28 00:00:00.0

国土交通省は今年6月1日から横浜市と連携して「不動産総合データベース」(不動産に係る情報ストックシステム)の試行運用を開始しました。試行運用は来年2月末まで行われる予定です。このシステム、いったいどんなものなのでしょうか。


不動産総合データベースとは


少子高齢化が進行する中、不動産市場においては人口の減少により既存の住宅ストック数が世帯数を上回り、空家の増加が深刻化しています。このため、将来世代に継承できる良質な住宅ストックの形成、消費者が安心して購入できる中古住宅の流通市場整備、住宅・不動産取引情報の透明化などが急務となっています。

ところが現在、中古マンションなどの中古住宅売買は新築マンションなどと比べて必要な情報が多く、かつ各種情報の保存は多方面に分散している物件が大半といわれています。しかも、中古住宅売買の場合は、そもそも新築時の図面が保存されているのかさえ不明です。

中古住宅の売買に際しては、物件の劣化状況を調査する必要があります。引き渡し後に発覚するかもしれない瑕疵(かし)に備え、上下水道の配管、電気系統の配線、境界の確認なども必要です。

中古住宅売買を仲介する不動産会社にとって、こうした情報収集や調査に関する負担やコストは大きく、それが消費者に対する適切で迅速な情報提供を困難にしているといいます。その結果、不動産会社の本来の役割であるコンサルティングサービスも不十分なものに止まっているといわれています。そして、これらが中古住宅の円滑な流通を阻んでいる要因の一であると考えられています。

そこで国土交通省は中古住宅の円滑な流通を促進するため、2012年6月の「不動産流通市場活性化フォーラム」の提言と同年9月の「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会」の提言に基づき、不動産会社が中古住宅売買に必要な情報を容易に収集し、消費者に適切で満足度の高い情報提供ができる情報システムの整備を目指し、学識経験者と不動産関連団体とで構成する「不動産に係る情報ストックシステム検討WG」を設置し、具体的なシステムの構築と運用についての検討を重ねてきました。

そして国交省では検討結果に基づき、2014年3月に「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」を策定。構想の実現のため、昨年度には横浜市と連携して中古住宅売買に必要な情報の所在、保管、提供状況などの実態調査を行った上で、一元的に蓄積・管理する情報システム「不動産総合データベース」のプロトタイプを開発しました。

これを受け、同省では不動産会社にシステムを実際に利用してもらい、不動産会社から消費者に情報を提供してもらうことで、システムの効果や課題を検証しようと今年6月から試行運用を開始したのです。

試行運用は横浜市内で売買されるマンション、戸建て住宅などの中古住宅物件を対象に実施されています。直接的なシステム利用者は神奈川県内の東日本レインズ(※)会員となります。

 


物件情報と周辺地域情報を一元的に蓄積して一覧的に提供


不動産総合データベースは多方面に分散・保存されている情報を一元的に蓄積・管理することで、中古住宅の売買に必要な情報を一覧的に利用できることを目的に開発されています。データベースは「物件情報」と「周辺地域情報」という2つのサブシステムから構成されています。国土交通省がデータベースへの蓄積を目指しているのは以下のような情報です。

<物件情報>
●レインズ(※)に保存されている「過去の物件の売買履歴情報」(成約価格、成約時の物件の間取りなど)
●住宅履歴情報蓄積機関に保存されている「住宅履歴情報」(建築計画の概要、設計図、建築確認済み証、住宅性能表示等各種認定に関する情報、瑕疵保険等住宅関連保険の情報、住宅の維持・補修に関する情報など)
●マンション管理センター等に保存されている「マンション管理情報」(管理組合・管理会社へのマンション管理委託情報、マンション管理費・修繕積立金等会計情報、修繕履歴、修繕計画などの情報)

<周辺地域情報>
●地方自治体や不動産開発会社等に保存されている電気、ガス、上下水道などの「インフラ整備情報」
●地方自治体や国土交通省に保存されている「法令制限の情報」(住宅の区域区分、容積・建ぺい率、防火地域等都市計画などの情報)
●地方自治体に保存されている「ハザードマップ情報」
●国土交通省や不動産関連会社に保存されている「周辺の公共施設情報」(市町村役場、医療機関、文教施設、消防署、警察署、公園などの立地状況に関する情報)
●国土交通省や地方自治体に保存されている「周辺の不動産価格情報」(物件取引価格、地価公示・地価調査、固定資産税路線価などに関する情報)

こうした情報は不動産総合データベースに一元的に蓄積する必要性が高く、技術的にも蓄積が可能と考えられます。国交省では試行運用を通じて、情報保存関連機関・会社から協力を得られた情報を逐次システムに蓄積し、試行利用に供するとしています。蓄積対象とする情報についても、利用者のニーズや試行運用での検証を踏まえ、随時見直しをしていく方針です。

国土交通省のロードマップによると、システムは試行運用の検証結果に基づいて2016年度から2017年度にかけて改善を行い、2018年度から本格運用に入る予定です。その後、蓄積情報の拡充とシステム運用地域を順次全国に広げてゆくとしています。

すでに約20年前から不動産総合データベースと似たシステムをほぼすべての州で運用している米国では、国交省が蓄積を目指している前述の「物件情報」と「周辺地域情報」が実際に蓄積され、不動産会社と消費者に活用されているといわれています。

それが米国の中古住宅流通市場の活性化に大きく貢献したことは疑いがないといえます。不動産業界でも「不動産総合データベースの本格運用で中古住宅売買の透明性が高まれば、中古住宅流通市場が活性化するのは確実。消費者に対するコンサルティングサービスも充実させられる」と期待しているようです。

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※レインズ:レインズとは宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定した不動産流通機構のことです。現在、全国で4機構(東日本レインズ、中部圏レインズ、近畿圏レインズ、西日本レインズ)が指定されており、担当地域の不動産情報の交換を行っています。レインズによる情報交換を通じて、毎年10万件以上の不動産流通が行われています。


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