最適な住宅ローンの選び方

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住宅ローンといえばかつては横並び金融商品の1つで、どこの銀行の住宅ローンでも融資内容にさほどの差がありませんでした。このため、選択肢は各行の僅かな金利差と融資を受けるための事務手数料の差、借入期間を何年にするかということぐらいでした。しかし最近では銀行も住宅ローンの差別化を進め、多種多様なサービスを付けた住宅ローンが発売されています。住宅ローンは金利や事務手数料の比較で選んでいた時代から、サービスの比較で自分のマンション購入に最適なローンを選ぶ時代になってきたようです。
商品が多様化した住宅ローン
住宅ローンを組んで分譲マンションを購入する場合、多くの銀行が団体信用生命保険(団信)への加入を条件にしています。
団体信用生命保険とは、住宅ローンの返済途中で住宅ローン契約者が死亡または高度障害になった場合、契約者に代わって生命保険会社が住宅ローン残債を支払う保険です。保険料は住宅ローンの金利に含まれているので、保険料を別途支払う必要はありません。
銀行側にとってはローン返済不能のリスクを回避するのが目的ですが、契約者にとってもメリットがあります。「もし自分が万一の状態になった時、残された家族がローンを返済し続けなければならない」リスクを回避できるからです。
最近は、この団体信用生命保険に「三大疾病保障特約付き」、「七大疾病保障特約付き」などの「○大疾病保障特約付き住宅ローン」を発売する銀行が増えています。
例えば「三大疾病保障特約付き」の場合は、契約者が「がん」「脳卒中「急性心筋梗塞」のいずれかをわずらい、所定の症状になった時はローン残債を保険金で支払えるという特約です。
また、人員リストラや倒産などの失業不安に対応した「失業保障特約付き住宅ローン」を発売する銀行も出てきています。例えば、自己都合退職ではない失業に対して、失業1回当たり最長半年、通算3年分のローン返済額が保険金で支払われます。
その特約料は100万円当たりで800円といわれています。例えば3000万円の住宅ローンを組んだ場合なら、年間2万4000円(3000万円÷100万円×800円)の特約料支払いで不意の失業に備えられる仕組みです。
ローン返済を効率的に行うためのサービスも増えています。元金を前倒しで返済する「繰り上げ返済」の手数料を無料にする銀行が増えているほか、住宅ローン契約者に対して自行のATM手数料を無料にする銀行、振込手数料を無料にする銀行などもあります。
「第三の金利タイプ」も登場
住宅ローンはこれまで「全期間固定型」、「固定期間選択型」、「変動型」の3つの金利タイプで融資が行われてきました。
各タイプには、全期間固定型ならば「返済計画を立てやすい反面、市中金利が下落してもその恩恵に与れない」、変動型であれば「市中金利が下がればローン返済額が減少するが、逆の場合は増加する」など、それぞれに一長一短があり、どの金利タイプを選ぶかが住宅ローン利用者の悩みの種の1つになっていました。
ところが最近では、「第三の金利タイプ」と呼ばれる「金利ミックス型住宅ローン」も発売されています。
金利ミックス型住宅ローンとは、説明した3タイプの金利から任意に2つの金利タイプを組み合わせた住宅ローンのことです。具体的には「全期間固定型+固定期間選択型」、「全期間固定型+変動型」、「固定期間選択型+変動型」の組み合わせで、それぞれ任意に50対50、30対70、80対20などの割合でローンを組みます。
従来の全期間固定型と変動型を比較した場合、一般には変動型の方がローン返済当初の金利が低いので月々の返済額を少なくでき、家計にも余裕ができます。一方、全期間固定型の場合はローン返済当初から月々の返済額が多いので家計は厳しくなりますが、将来の金利上昇リスクには影響されることがないので、ローン返済計画さえしっかりしていれば長期的にはローリスクといえます。
金利ミックス型は「固定金利と変動金利の長短を中和したような住宅ローン」で、変動金利のリスクをある程度抑えながら、月々のローン返済額を全期間固定型より減らせるのがメリットといわれています。しかし、ローン返済中に市中金利が上昇すれば、全期間固定型よりも月々の返済額が増え、返済総額も増えてしまうというリスクを完全に防げるわけではありません。
簡単な試算をしてみましょう。
例えば2000万円の住宅ローンを返済期間30年の元利均等返済で借り入れ、返済開始から5年後に金利が1.8%上昇した場合、返済開始から5年間とそれ以降とでは返済額に次のような差が生じます。
<全額全期間固定型の場合>
●ローン返済開始から5年以内(年利3.%)…8万4321円
●ローン返済開始から6年以降(年利3.%)…8万4321円(月額返済額は変わらず)
<全額変動型の場合>
●ローン返済開始から5年以内(年利1.5%)…6万9024円
●ローン返済開始から6年以降(年利が3.3%に) … 8万4569円(月額返済額は1万5545円増加)
<金利ミックス型:借入額が全期間固定型(年利3.0%)と変動型(1.5%)半々の場合>
●ローン返済開始から5年以内…7万6672円(固定型分4万2160円+変動型分3万4512円)
●ローン返済開始から6年以降…8万4444円(固定型分4万2160円+変動型分4万2284円→月額返済額は7772円増加)
こうして比較してみると、金利ミックス型は全期間固定型より5年以内は月額返済額が少なく、6年目以降も変動型より月額返済額が少なくて済むのが分かります。その意味で全期間固定型より低金利で、変動型より金利変動リスクが少ない住宅ローンであることは確かなようです。
住宅ローンは、家計に無理なく返済できる範囲内で組むのが何より重要です。しかし住宅ローンのサービスが多様化した今日、無理なく返済できる範囲内で銀行各行のサービスの違いを知っておくと、自分のマンション購入時に最適な住宅ローンを見つけやすくなるかも知れません。
また、金利ミックス型は従来の金利タイプにはなかったメリットがありますが、「さまざまな事態を想定した綿密なシミュレーションをしないと意外な失敗をする可能性がある」と住宅ローン関係者は指摘しています。その意味で、一般利用者にはちょっと難易度の高い住宅ローンかも知れません。もし利用する場合はフィナンシャルプランナーなどの専門家にも相談したほうが安心でしょう。