消費税増税後落ち着きを見せている不動産市場と活況なJリートを考える

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2014年4月に国土交通省が発表した「建築着工統計調査報告」によると、新設住宅着工戸数は2013年以降、持家(マイホームの建築)及び貸家(賃貸住宅の建築)とも上昇し、2014年では前年比で10%以上増加するという大きな伸びを示しています。この伸びは、消費税増税前の駆け込み需要が大きかったと思われ、直近の月次ベース(国土交通省不動産市場動向マンスリーレポート2014年7月)では、前年同月比マイナスと減少に転じています。
また、同レポートにおける首都圏・近畿圏マンション市場動向によると、首都圏における新築マンションの供給戸数は前年同月比28.3%減、平均価格0.1%減、㎡単価0.4%減と、ともに前年同月比を下回っています。しかし、契約率は、76.6%で好不調の目安とされる70%を17カ月連続して上回っています。ここから、新築マンションでは新規供給戸数を大きく減少させることで、消費税増税後の需要減少を調整している状況がうかがえます。また、首都圏における中古マンション市場の動向は、新規登録件数が前年同月比1.2%減と下回ったものの、成約平均価格6.6%上昇、成約㎡価格6.4%上昇と、ともに前年同月比を上回っています。成約価格の好調から、中古マンション市場における需要ニーズは維持されていることが推測されます。
活況なJリートが不動産市場に及ぼす影響は?
国土交通省が2014年5月30日に発表した「平成25年度不動産証券化の実態調査」によると、不動産証券化の対象として取得された不動産及びその信託受益権の資産額が、約4兆4千億円となり前年度比でプラス31.4%と大きく伸びています。特にJリートの取得額が大きく伸びていることが影響しています。
では、活況となっているJリートは不動産市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。Jリートなどの不動産投資法人が購入を増やせば、売却した人(事業者)は得られた資金で次の不動産に投資するという循環が発生します。一定量の不動産取引が行われることは、市場を持続的に安定させます。「売り手」と「買い手」が常に存在することで取引が成立し、その取引が指標となって不動産価格に影響を与えるのです。価格面については、不動産投資法人は、賃料収入などによる「収益性」を重要視して取引価格を決定しています。この点が、かつての不動産バブル時期と大きく異なるポイントです。今後の住宅市場においても、特に中古マンションについては、「収益性」を重視して取引が行われることは大きなメリットと言えるでしょう。なぜなら、築年数による価値によって価格が大きく影響される中古マンションでも、賃料収益が見込める賃貸マンションとして売却できることになるからです。