高齢期の住み替えとこれから

目次
「子どもが独立し、広い住まいに夫婦二人は広すぎる」
「階段の上り下りがきつくなった」
「駅までの長い距離を歩くのがつらい」
年を重ねるとともに、家族の増減や体力的な変化が生じてきます。そのため、住み替えを検討する家庭は昔から少なくありません。従来、前の住まいが持ち家戸建てであれば、その9割が持ち家戸建てへ住み替えをしていました。ところが、一般社団法人不動産流通経営協会の「高齢期における住替え意向に関する把握調査」によると、直近10年間では持ち家戸建てから持ち家戸建てへの住み替えは4割弱にとどまり、分譲マンションや賃貸住宅への住み替えが進んでいます。高齢期の住み替えの今と今後を考えます。
高齢期の住宅は快適な形を求めてダウンサイジングしていく
世帯規模の縮小に伴い、シニア・シルバー世代の住宅にそれほどの広さが必要ではなくなります。
直近 10 年間で進んでいる持ち家戸建てから分譲マンションや賃貸住宅等への住替え理由を見ると、「子供の独立」、「老朽化」、「利便性」が多く、住替え時の年齢別に見ると、年齢が上がるにつれて「子供の独立」、「利便性」、「病院やケア施設の近く」、「バリアフリー」、「耐震性」の割合が高まっています。※1
立地や設備のほうが広さよりも優先されることを考えると、戸建てよりもマンションが選択されるようになるのは、うなずけます。地震による倒壊のリスクを避けて、木造の戸建てよりも鉄筋コンクリートのマンションを選ぶ考え方もあるでしょう。
住み替えの自己資金はどのように?
では、住み替えのための自己資金はどのように調達できるのでしょうか。借り入れが難しくなる70歳以上は、資金調達が一つの課題となります。とはいえ、住み替え後も持ち家で過ごしたいという気持ちもありますよね。そこで高齢者でも利用できる、「リバースモーゲージ」という仕組みを紹介します。
リバースモーゲージとは、高齢者が保有している住宅を担保として、生活資金等の融資を受け、高齢者(契約者)の死亡時等に当該住宅を処分して一括返済する仕組みです。この融資を住み替え先の購入資金とすることができれば、安心して住み替えができるかもしれません。既に、国土交通省の展開する「高齢者等の住み替え支援制度」を使って、高齢者への住宅ローンサービスを提供する法人も出始めました。一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が高齢者の現在所有している住宅を借上げることを前提に、高齢者が新たに居住する住宅を取得するためのローンです。今後、取り扱う金融機関が増えてくるかもしれません。進み続ける高齢化社会において、このような住宅取得のための積極的な取り組みが期待されています。
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※1:一般社団法人不動産流通経営協会「高齢期における住替え意向に関する把握調査」