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都心8 区の中古住宅マーケットウォッチVol.6

公開日:2024-03-25 00:00:00.0

目次

前回の報告に引き続き、直近1年間の都心8区中古マンションの四半期平均販売価格などを見ていきます。


都心8区の㎡あたり販売単価などの推移は?(図1)




都心8区㎡単価(図1)を見ると、すべての区で2023年第4四半期は2023年第3四半期より上昇しており、特に港区(176.22万円/㎡)と千代田区(175.46万円/㎡)の2区における㎡単価は175万円を超える結果となりました。


対前年の同時期から1年間の変動率を示す「対前年四半期㎡単価変動率(表1)」でみても、2023年第4四半期では、都心8区で全てプラスです。特に中央区が10.19%と都心8区の中では一番高く、2023年第3四半期の6.10%から約4%上昇しました。さらに新宿区が8.71%となっており、この2区が高い数値となっております。逆に品川区は1.72%、目黒区2.00%と低く、2023年第3四半期と同じ傾向が続いています。なお2023年(年間)における「変動率の1年間平均」でみると、高い順では千代田区(6.51%)、新宿区(6.35%)、中央区(6.32%)となっており、逆に低い順では目黒区(2.55%)、文京区(3.60%)、港区(3.64%)の順となっております。都心8区の「変動率の1年間平均」全体で見れば、各区とも3%~6.5%の間で推移していますので、2023年は上昇傾向が続いたといえるでしょう。一方で都心8区の平均販売価格(表2)を見ると、高い順では港区(9,883万円)、千代田区(8,559万円)、渋谷区(8,371万円)となりました。この3区は前回(マーケットウォッチVol.5)と同様、8,000万円を超える結果となりました。さらに平均専有面積(表2)を見ると、港区は56.08㎡と8区の中で一番広く、逆に千代田区が48.78㎡で一番狭い数値となっています。こちらも前回(マーケットウォッチVol.5)と同様の傾向でした。


また築年(年)平均は、古い順では目黒区32.52年、渋谷区31.04年と30年を超えているのに対し、新しい順では、中央区20.09年、港区25.65年と20~25年の築年数で、築年(年)平均の差は最大で10年以上の開きがあり、前回(マーケットウォッチVol.5)と同様の傾向でした。この差は前回の考察でも触れたように、都心の再開発などで築年数が浅い物件が多いと推測され、販売される中古マンションにも特徴が出てきているためと考えられます。



都心3区(中央区、港区、千代田区)の成約件数-平均成約単価の推移は?(図2)




都心3区においては、これまでアップしたVol.5までのマーケットウォッチと同様、今回も半年前の件数と成約単価の間に相関関係が見られました。件数が増えていくと、半年後には、成約単価も影響を受けて大きくなるという見方ができます。直近の2023年第4四半期は、成約件数、成約単価、ともに対前期比で上昇する結果となりました。



都心3区(中央区、港区、千代田区)の物件ストック数と成約比率は?(図3)




都心3区のストック数と成約比率との関係は時間差(ラグ)なしで、負の相関関係があり、直近の2023年第4四半期は、2023年第3四半期と同様、ストック件数は対前期やや下落、成約比率はやや上昇しています。



TOPICS


(1)価格の2極分化

ここでは、都心3区(中央区、港区、千代田区)と城南地区(品川区、目黒区、大田区、世田谷区)のレインズデータ(2022.12~2023.12)の平均値などを見ることにより、都心部とその周辺区の傾向の違いを見てみます。




都心3区の平均成約価格(表3)は8,960万円となっており、平均新規登録価格(9,587万円)の約90%、平均在庫物件価格(9,545万円)の約93%の価格で取引され、平均新規登録価格や平均在庫物件価格が平均成約価格を上回っています。


平均成約価格との差分は売主と買主での価格交渉、販売価格の値下げがあってから取引されたと推測されます。一方で城南地区の平均成約価格(表3)は6,231万円となっており、平均新規登録価格(4,983万円)の約125%、平均在庫物件価格(4,871万円)の約127%の価格で取引され、平均成約価格が平均新規登録価格や平均在庫物件価格を上回っています。


城南地区は平均新規登録価格や平均在庫物件より平均成約価格が高く一見すると好調に見受けられます。しかし在庫件数の上昇率(表3)をみると、都心3は12.1%に対し城南地区は41.3%となっており、城南地区の在庫件数の上昇率が高くなっております。


城南地区で売れやすい販売価格帯の物件は、平均成約価格(表3)の数値から6,000万円以上、一方で6,000万円を下回る物件については販売が不調と推測されます。その結果在庫として積み上がり在庫件数の上昇に繋がり、「売れる物件」と「売れない物件」の二極化が進んでいると考えられます。


この傾向に関して仮説にはなりますが、中低所得者層は消費者物価が上昇し実質賃金が伸び悩む中、生活防衛に動く一方、高所得・富裕層は、低金利、円安などによる株高の中で、株式や不動産などへの更なる投資に動いているのではないかと考えられます。


都心を中心に平均販売価格が上昇していることは、必ずしも楽観できる状況ではなく注意が必要です。今回は、価格帯からの分析をもとに仮説を立ててみました。高額物件においても売れやすい物件と売れにくい物件の見極めが必要であると言えるでしょう。


(2)大規模再開発エリア周辺物件の価格高騰


2023年11月にオープンした麻布台ヒルズの住宅棟には、「麻布台ヒルズ森JPタワー」「麻布台ヒルズレジデンス A棟、B棟」「ガーデンプラザ A~D 棟」があります。近年「都心、駅近、大規模再開発」地区の住宅価格は高騰していますが、麻布台ヒルズの住宅棟で、専有坪単価2,000万円台後半の取引で成約しています。また、六本木1丁目エリアの過去の中古物件の成約事例では、専有坪単価1,000万円前後の物件が中心でしたが、現在売出中の物件では、専有坪単価1,000万円から3,000万円弱のものまであり、周辺エリアの中古物件の価格相場は、麻布台ヒルズに押し上げられています。


(3)外国人購入者の傾向


高額物件の購入者の中には、多くの外国人投資家の方が含まれます。台湾を中心とする外国人投資家の売買仲介を行っている仲介業者からのヒアリングにより、外国人購入者の傾向をいくつかピックアップします。


・購入者の属性は、法人名義、会社経営、ファミリー層、単身層とさまざまで、購入目的は、セカンドハウスとして購入する目的が多い(日本への旅行時に使いたい方が多い)

・2015年当時は、投資目的の方が多かったが、今は実需と投資は約6:4の比率になっている。

・3Aと言われる地域(Azabu、Aoyama、Akasaka)は2010年頃から人気は根強い。

・港区の東京タワービューや晴海、豊洲、勝どきエリアのオーシャンビューのニーズも強い。(埋め立てを気にする方もいるがその分価格に反映されているので割り切る方が多い)

・新耐震は必須で、マンションは築15年以内を希望される方が多い。毎月のコスト面からヴィンテージマンションは好まれない。

・投資物件(ハイグレードマンション)の利回りは、麻布エリア3%台、他都心エリア4%台を希望される。



まとめ


今回も都心における中古住宅のマーケットは、需要、供給共に好調で、引き続き上昇局面であることを確認しました。現在の販売価格が、高すぎるのかどうかいうことにつき議論があるところですが、日本不動産研究所の第21回「国際不動産価格賃料」(2023.10現在)※3によれば、マンション/高級住宅(ハイエンドクラス)の価格水準は、東京を100.0として、香港263.4、上海160.7、北京127.2、台北160.7、ソウル86.5、シンガポール137.3、ニューヨーク142.9、ロンドン205.4とまだ海外の主要都市に比べ安く、一方賃料水準は、東京を100.0として、香港203.1、上海84.5、北京76.8、台北71.6、ソウル57.2、シンガポール160.8、ニューヨーク267.5、ロンドン261.9と、海外、特にアジアの主要都市と比較して高い水準であると言え、投資効率は比較的高いと言えます。価格帯も含め優良物件とそうでない物件の見極めが一層重要になってきた局面にあることも確認しました。おそらく、2024年の間に日銀のマイナス金利はゼロ金利になると推測されており、賃上げの動向も注目されるところです。


今後も信頼のできる不動産の専門家にアドバイスを受けつつ、しっかり不動産マーケットを見ていきましょう。


※3:出典「日本不動産研究所 第21 回国際不動産価格賃料指数(2023年10月現在)」 一般社団法人 日本不動産研究所

(https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2023/11/9d91ff46c064237365f723d7f72a789f.pdf)

P9 3-3.マンション/高級住宅(ハイエンドクラス)の価格水準比較、3-4.マンション/高級住宅(ハイエンドクラス)の賃料水準比較



Writer

村木 信爾 氏

不動産鑑定士、不動産カウンセラー、FRICS、京都大学法学部卒、ワシントン大学MBA。

信託銀行にて、不動産鑑定、仲介等の業務に携わった後、現在、大和不動産鑑定㈱シニアアドバイザー、明治大学ビジネススクール兼任講師(元特任教授)、PROSIL代表。近著に『不動産プロフェッショナル・サービスの理論と実践』(清文社)2022.6刊、がある。


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