知らなければ損をする「居住用財産」のポイント

目次
住宅の購入、所有、売却に関しては、登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、譲渡所得税など、さまざまな住宅税制が関わってきます。これらの税制で、しばしばキーワードの役割を果たしているのが「居住用財産」です。
しかし、不動産の一般向け解説などでは、これが便宜的に「マイホーム」に置き換えられている場合が多く、居住用財産の本来の意味が見過ごされがちです。つまり、決して「マイホーム=居住用財産」ではないのです。
居住用財産が税制上でキーワードの役割を果たすのは、居住用財産にさまざまな特例措置が設けられているからです。特に住宅を売却する際には、居住用財産の特例措置を受けられるかどうかで、数百万円以上の課税額の差が生まれます。そのため、居住用財産の意味を正しく知っておくことが望まれます。
居住用財産の範囲と特例適用のポイント
税法上の居住用財産は、以下の範囲の財産を指します。
「所有者が自己の生活の拠点として利用している家屋および敷地(借地を含む)をいい、一時的な目的で居住している家屋は認めない」。
生活の拠点が日常的なものか一時的なものかの判断は、税務署が所有者の配偶者や家族の日常生活の状況、居住目的、住宅構造、住宅設備などを総合的に勘案して下すといわれています。住民票があるといった程度の証明では居住用財産と判断されないので注意が必要です。
また、居住用財産売却の範囲として、以下の5つが規定されています。
●現に居住の用に供している家屋
●現に居住の用に供している家屋と共に売却する敷地
●居住の用に供さなくなった家屋
●居住の用に供さなくなった家屋と共に売却する敷地
●災害により滅失した家屋の敷地
これだけ読むと、居住用財産の定義は難しそうですが、単身者や既婚者が住宅を購入し、住み替えなどで売却するまで通常の形で居住していれば、難しい問題は何も起こらないと考えられます。
しかし、住み替えなどで、住み替え先の「買い先行」で住まなくなって久しい住宅を売却する場合は、売却期間に注意する必要があります。
というのは、「居住用財産を売った時は、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除する」との特例があり、この特例を受けるためには、売却する住宅に「住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること」という規定があるからです。
例えば、2015年5月に住み替え用のマンションへ転居した場合は、2018年12月31日までに前の住居を売れば、その住居は居住用財産と認められ、特例を受けられます。この間、前の住宅を第三者に賃貸していても居住用財産とみなされ、特例が適用されます。
しかし、2019年元旦に売却した場合は居住用財産とは認められず、特例も受けることができません。元旦の売却などレアケースとはいえ、たった1日で3,000万円の特別控除を受けられるか受けられないかの分かれ目になるので、注意したいところです。
曖昧さを避け「本宅」「別宅」をはっきりしておく
また、単身赴任や転地療養などで所有者が居住していなくても、配偶者などの家族が引き続き居住している場合は居住用財産として扱われます。
しかし、所有者が、単身赴任先でマンションを購入し、そこを赴任先の「生活の拠点」にしているといった場合には、生活の拠点は家族が住んでいる本宅か赴任先の別宅かが問われ、生活の拠点度が高い住宅が居住用財産とみなされます。この例では、本宅より狭小で住宅設備も貧弱な赴任先の別宅が居住用財産とみなされるケースもないとはいえないので、赴任先での別宅購入は注意したいところです。
ライフスタイルの変化により、今後は都心のマンションと保養地の別荘など「二地域居住」や、親からの相続などによる複数住宅所有のケース増加が予想されています。こうしたケースではどちらが自分の生活の拠点であるかが曖昧になることも予想されます。住宅の売却に際しては「居住用財産」がキーワードになる以上、こうした曖昧さは避けるのが賢明といえそうです。