マンション購入の頭金はどれだけ準備すればいい?

目次
マンションを購入する際に悩むことの1つが、頭金と住宅ローン借入れの割合といわれています。「頭金の比率を多くするとそれだけ貯蓄が減り、万一の時が心配」。だからといって「住宅ローンの借入額が多いと毎月の家計が大変」という悩みです。では、マンション購入にはどの程度の頭金を用意すればよいのでしょうか。また適切な購入・返済計画はどのようものなのでしょうか。
頭金は「2~3割準備すれば大丈夫」の落とし穴
昔から「マンション購入の頭金は2~3割」が目安といわれ、これが準備すべき頭金の常識のようになっています。ところが、意外なことにこの常識が曲者です。なぜなら、マンション購入で必要になるのは「頭金と住宅ローンのみ」ということが、この常識の前提になっているからです。
実は、マンション購入で本当に必要なのは「頭金をいくら準備する」ということではなく、「物件購入の予算計画」と「購入後の住宅ローン返済計画」の2つの計画を立てることなのです。
予算計画では「総予算(物件購入費+諸費用)が家計と照らし合わせて適正か」、返済計画では「家計に余裕のある住宅ローンを選んでいるか」が重要なチェックポイントになります。そのため、頭金と住宅ローンの割合だけをいくら研究しても「安全な住宅ローン完済計画」は立てられないのです。では、どのように、この2つの計画を立ててればよいのでしょうか。
まず、物件購入の予算計画ですが、計画を立てる際に重要なのが「現在の家賃との違い」です。
例えば、現在住んでいる2LDKの賃貸マンションの家賃が管理費込みで月額14万円の場合、年間住居費は168万円になります。
そこで、住宅ローン返済額と諸費用(管理費、修繕積立金、固定資産税・都市計画税など)を合わせた年間支払い額が現在の年間住宅費と同等の168万円前後の物件を探すことになります。なぜなら、現在の家賃を超える額の物件を選ぶと、住宅ローン返済が厳しくなることが避けられないからです。
そして、年間住居費が168万円の物件で、年間諸経費が仮に24万円だとすると、168万円から24万円を差し引いた144万円が住宅ローン返済可能額になります。月額では12万円になります。
この月額返済額12万円の範囲内で借りられる「住宅ローン融資限度額+頭金」が比較的無理のない物件購入額になります。
物件購入額を決めるにはもう1つ、金融機関が住宅ローン融資審査の基準の1つにしている「総合借入額」を目安にする方法もあります。
総合借入額とは「借入額が年収の何倍か」という基準で、一般には年収の7倍まで借り入れ可能といわれています。しかし、無理のない総合借入額は「手取り年収の5倍」というが一般的になっています。すると、手取り年収が600万円の人の場合には、安全な5倍で考えると「3000万円+頭金」の物件が購入対象になります。
現実的には総合借入額を目安にするのは大雑把過ぎることになるので、やはり「現在の家賃との違い」を基準にした方が安全なようです。
マンション購入計画は家計改善への道に繋がる
次に購入後の住宅ローン返済計画について考えていきましょう。返済計画を立てる際に重要になるのは「諸費用と頭金の貯蓄計画」です。
諸費用とは印紙税、不動産取得税、司法書士報酬など「物件取得にかかる諸費用」、同じく印紙税、融資手数料・保証料、火災保険料など「住宅ローン借り入れにかかる諸費用」、引っ越し代、照明器具購入費など「その他諸費用」の総称です。
諸費用は物件価格の3~10%が目安といわれています。
例えば2LDKで4000万円の物件を買う場合、10%なら400万円の諸費用が住宅ローン返済額以外に発生します。しかも諸費用は現金払いが多いようです(諸費用ローンもあります)。そうなると、マンション購入に当たっては、最低限諸費用分の頭金が必要になります。
このことから考えれば「頭金は2~3割」といわれているマンション購入の常識はあまり意味のないことが分かります。頭金比率を何割に設定するかは消費者個々の家計状況により決まるものになるからです。
そして、頭金比率より重要なのが、頭金をいかにして準備するかの問題です。頭金準備の一般的な方法が「先取り貯金」です。
これは手取り収入の一定割合を自動積立預金などに充て、残りの収入で日常的な生活費を賄う貯蓄方法です。先取り貯金は手取り収入の「10~20%が無理のない金額」と一般的にはいわれています。これに当てはめてみると、手取り年収が600万円の人であれば月額5~10万円が先取り貯金額になります。そして仮に10万円先取り貯金を5年続けると単純計算で600万円の頭金を準備できる理屈になります。
家計から先取り貯金額を比較的容易に捻出しやすい方法が、家計支出の分別です。
年間支出額を食費、交際費、被服費などの「変動費」と、家賃、光熱費、通信費、教育費などの「固定費」に分け、最初に固定費を月毎に分析し、ムダな支出がないか、圧縮できる支出がないかなどを洗い出すのです。次に変動費を同様に洗い出し、それで浮いた支出額を先取り貯金に充てます。「ストレスの少ない先取り貯金法」といわれています。
先取り貯金には、もう1つメリットがあります。それは家計の改善です。先取り貯金を継続するためには、自ずと毎月の支出に敏感にならざるを得ません。節約意識も高まります。今まで無意識に使っていた浪費などを発見できます。その結果、必然的に家計の改善につながります。
こうして見てみると、マンション購入のための予算計画と住宅ローン返済計画の立案は、結果的に家計改善につながる道でもあるといえそうです。