マネーと制度
 
買う

住宅ローン、全期間固定型利用者が大幅増

公開日:2015-12-22 00:00:00.0

目次

住宅金融支援機構が2015年9月に発表した「2015年度民間住宅ローン利用者の実態調査」によると、金利タイプが「全期間固定型」の利用者率は大幅増になる一方、「固定期間選択型」利用者率は大幅減となりました。その一方で、借入先別の金利タイプでは、ネット銀行利用者の半数以上が「変動型」を選んでいることも明らかになりました。この違いはいったい何を示しているのでしょうか。


「固定金利人気上昇、変動金利人気下降」の傾向鮮明に


同調査の内容を見る前に、住宅ローンの基礎知識をおさらいしておきましょう。住宅ローンは金利タイプにより以下の3つがあり、それぞれに一長一短があります。

●全期間固定型
契約時に設定した金利がローン完済時まで適用されるタイプ。ローン返済中に市中金利が上昇しても返済総額が変わらないので、景気に左右される心配がなく返済計画を立てやすい。反面、金利が下落してもその恩恵に与かれない。

●固定期間選択型
借り入れ後、一定期間は固定金利、その後は変動金利に移行するタイプ。ローン返済開始から一定期間は返済額を固定できるので、手元の貯蓄額に不安のある利用者に有利といわれている。反面、固定期間終了後に市中金利が上昇した場合、返済総額が膨らむ可能性がある。

●変動型
契約時の金利は短期プライムレートに連動した金利が適用され、ローン返済開始後は半年ごとに適用金利が変動するタイプ。適用金利が下がると月々の返済額が減少するが、逆の場合は返済額が増加する。契約時に返済総額が確定しないので、返済計画を立てにくい。

住宅ローンのこうした一長一短を踏まえた上で、利用者はどんな選択をしたのでしょうか。

調査によると、まず「金利タイプ別利用状況」では、2014年11月~2015年2月に行った前回調査と比べ全期間固定型の利用者率は29.4%から38%へと8.6ポイントの大幅増になった一方、固定期間選択型は31.4%から26.3%へと5.1ポイントの大幅減となり、変動型も39.3%から35.8%へと3.5ポイント減少しました。

これをサラリーマンなど一般利用者向け金融機関の「借入先の金利タイプ」で見ると、都銀・信託銀行では全期間固定型が前回調査の35.6%から48.9%へと13.3ポイントの大幅増となり、変動型は35.4%から30.1%へと5.3ポイントの減少となりました。地方銀行と第二地方銀行も都銀・信託銀行同様「全期間固定型増加、変動型減少」の傾向がみられます。

一方、ネット銀行と推察される「その他銀行」の場合は、全期間固定型が上記3業態行同様12.3%から17.2%へと4.9ポイントの増加を示していますが、変動型の減少は64.9%から63.8%へと1.1ポイントの小幅にとどまっています。減少幅は4業態行中で最小です。

「世帯年収別の金利タイプ」では全期間固定型はすべての年収層で前回より増加しています。対して変動型は、年収400万円以下層が前回調査の36.9%から37.6%へ0.7ポイント増加した以外、すべての年収層で前回調査より減少しました。

こうして見てみると、全体的には過去20年続いている「低金利時代」を反映してか、固定金利人気の高さを示す結果となりました。



ネット銀行利用者が変動型に注目するのはなぜ?


一方で今回の調査結果において興味深いのが、ネット銀行利用者の変動型金利への人気の高まりです。

変動型での利用者率は前回調査から1.1ポイント減少したとはいえ、利用者率は63.8%を占め、都銀・信託銀行の30.1%はもちろんのこと、地方銀行の51.9%、第二地方銀行の51.2%と比べても突出しています。

その理由は一般的な銀行とネット銀行との住宅ローン申込方法や融資審査基準の違いにあるようです。

一般的な銀行である都銀・信託銀行や地方銀行の場合、住宅ローンの申し込みは対面対応が基本です。住宅ローン利用者は銀行の窓口か自宅で銀行員に住宅ローンの申し込み手続きをします。

その際、銀行員は10年後、20年後の年収は現在と比べてどう変化するのかなどの見通しを利用者から聞いて、返済原資の確保、ローン返済計画などのアドバイスをしてくれるのが通常です。

そして、融資審査で、例えば利用者が希望した全期間固定型の金利1.2%の住宅ローン融資が不可能な場合は「1.5%ならご融資できます」などの提案をしてくれます。要は「融通が利く」という審査基準を一般的な銀行は設けているわけです。

これに対し、ネット銀行の住宅ローン申し込みはネット上ですべて行い、基本的に対面対応はしません。申し込みをネットで受け付けるため、年収、申込金利など申込書の記載内容は厳格で例外はありません。

そして、自行のWebサイトに明記された融資条件をクリアした利用者だけ融資するのがネット銀行の住宅ローンの特徴です。そのため、ネット銀行の審査は「(融資リスクを極小化するため)年収が低い人の審査は通りにくく、年収の高い人の審査は通りやすい」といわれています。

一方で、ネット銀行は実店舗を持たないことによる営業経費削減、マンパワー介在を極力排した融資審査による人件費削減などで浮かした経費を金利の安さに還元しています。そのため「金利の安さが魅力」になっているのです。

実際、価格比較サイトの「価格.com」の「住宅ローン比較」を見ると、全期間固定型の場合、都市銀行平均の最低・最高金利が1.59~2.22%なのに対しネット銀行平均のそれは0.99~2.79%、変動型も都市銀行平均0.76~1.08%に対しネット銀行平均は0.54~1.08%と、その差は歴然です(いずれも2015年10月現在)。

これを見れば、全期間固定型も変動型も、少なくとも優良融資先に適用されるネット銀行の最低金利は都市銀行より30~40%低いことが分かります。

金利にこれだけの差がつけば、ローン返済総額も大差がつきます。

例えば借入額4000万円、返済期間30年の住宅ローンを元利均等の全期間固定型で借りるケースをフラット35の「ローンシミュレーション」で試算すると、都市銀行の最低金利1.59%の場合は月額返済額14万円、返済総額5033万円となり、一方ネット銀行の最低金利0.99%の場合は月額返済額12.9万円、返済総額4625万円となり、返済総額では408万円の差がつきます。
この差額は新車の国産の中型車1台を楽に買える金額です。変動型の最低金利なら都市銀行との差はもっと開きます。

金利を重視する傾向が強い住宅ローン利用者は、もともとネット銀行の変動型住宅ローンを利用する割合が高めです。調査に現れたように、都市・地方銀行利用者が全期間固定型で増加傾向を示したとしても、ネット銀行利用者にとって影響は大きくないようです。
利用の審査が厳しいネット銀行では変動型の人気が高まる一方、多くの住宅ローン利用者が相談する都市・地方銀行では、まだまだ全期間固定型が安定した支持を得ているといえるでしょう。

編集監修者情報
編集監修者
株式会社大京穴吹不動産
所在地
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-19-18 オリックス千駄ヶ谷ビル
設立年月
1988年12月
問い合わせ先
お問い合わせフォームはこちら

売却相場

お所有のマンションが現在どのぐらいで売却できそうか、実際に販売されている物件の販売価格より相場を調べることが出来ます。

販売事例検索

北海道・東北
甲信越・北陸
近畿

本社インフォメーションデスク

0120-988-264

受付時間 10:00AM〜6:30PM
年中無休(年末年始を除く)

キャンペーン・サービス