中古住宅を盛り上げる国の姿勢

目次
平成26年3月31日に「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」が国土交通省によって行われました。
これは、中古住宅の状態等を踏まえた適切な評価を行い、かつ、さまざまな金融支援によって取引をより活発にすることを目的として行われたものです。背景となっているのは、現在の中古住宅価格が新築時の価格と比べて価格低下の程度が大きく、資産価値としての減少が国内の住宅ストック価値の損失につながっているということです。2013年の6月に閣議決定された「日本再興戦略」において、2020年には中古住宅・リフォーム市場を20兆円に倍増させる目標が掲げられています。そのためのさまざまな取り組みが行われていますが、今回のラウンドテーブルもその一つです。
中古住宅における日本とアメリカの評価制度の違い
日本における現在の中古住宅の評価は、土地価格プラス建物価格という足し算で評価されています。土地の価格を対象にすると、地域差をはじめとした価格の変動幅が大きすぎる点が問題となっています。例えば、地方における物件の評価が上がらず地方経済の弊害となることや、資産が大きく下がり続ける状況が挙げられました。また建物の評価では、築年数が大きく影響しています。これは耐用年数を20年と想定して設定されているため、築年数が古い物件の住宅はほとんど評価されません。しかし、今回の報告書の中では実際の耐用年数はもっと長いことが客観的に明らかになったと述べられています。さらに、「RC造の建物においては、検査及び雨水の進入を防ぐ適切な維持管理を行うことで、100年以上基礎及び躯体を維持することが可能であると考えられる」としています。つまり、耐用年数を20年とすることは実情と合っていないのです。
一方、アメリカでは、「実質的経過年数(鑑定人によって建物の様式や地域性を踏まえて設定)」と「経済的残存耐用年数(鑑定人によって建物の維持・修繕・改修に係る諸状況を踏まえて算出)」によって割り出された「経済的耐用年数」によって評価されています。そのため、リフォーム投資や管理状況なども評価対象となり、住宅の価値が中古になったからと言って日本ほど大きく下がらないのです。
新たに評価制度が検討されています!
日本における中古住宅評価における課題を解決できるものとして、家賃収入がどの程度見込まれ、どのくらいの期間収入が持続するかといった「収益力」を重視して評価されることが提案されました。賃料においては、土地の価格ほど地域差に開きがなく、価格の変動の幅も狭くなっています。そのため、このような収益力が評価となれば、地方の主要都市における中古マンションの資産価値が高まる可能性も出てくるでしょう。また、中古物件について「この住宅の実質的な経過年数は何年か」または「この住宅にあと何年住めるのか」を示すことによって、消費者が中古住宅を検討しやすい状況にするべきだとする意見もだされています。
中古住宅市場の活性化がもたらすものは?
このラウンドテーブルでは、「中古市場が活性化することによって、中古住宅の資産増大と活用促進が進めば、個人金融資産が稼働して消費や投資が拡大し、日本の経済全体に好循環をもたらすとしています。また、高齢者における住み替えをスムーズにし、高齢者と若年層で住宅を循環させることで、子育て世代における住宅の確保を可能にすることなども挙げられました。
中古住宅活性化によって、これまで平準化していた中古住宅の価格が、物件の立地条件、維持管理の状況、リフォームの内容をより踏まえたものになるかもしれません。さらに、「購入後、どれくらい住むことができるのか」が分かるようになれば、消費者が検討する際の判断材料も明確となり、購入を検討しやすくなるでしょう。中古物件も増加し、より選択の幅も広がって、価格と希望の一致した物件を見つけやすくなるのではないでしょうか。