市況・マーケット
 
その他

2023年度 都心部住宅マーケットの展望

公開日:2023-03-16 00:00:00.0

目次

本コラムでは新年度となる2023年度のマンションマーケットの見通しについて、その論点になる金利上昇の不動産価格へ与える影響や投資家の動向を中心に展望してみたいと思います。


【論点.1】 円安、低金利から円高、金利上昇方向へ


①日本における住宅ローン金利上昇が生じた場合の試算


まず気になることは、日本における住宅ローンを中心とした金利上昇が発生すると、どのくらいの借入限度額の差が生じるのかということです。具体例を挙げて説明します。


例)年収800万円、返済負担率30%として、30年間、元利均等返済で住宅ローンを借りる際、

金利1%の場合 ⇒ 借入限度額は6,218万円

金利5%の場合 ⇒ 借入限度額は3,726万円となります。


5%の場合は1%の場合に比べ約60%しか借りることができなくなり、借入限度額の差額は2,492万円と高額です。(住宅金融普及協会WEBサイトシミュレーションより)

このように、金利の変動は購入者の借入可能額、購入可能額、そして物件の販売価格にも大きく影響を与えます。


②アメリカにおける住宅ローン金利


続いてアメリカの住宅ローン金利に触れておきます。アメリカでの金利と住宅価格の動きは今後の日本における金利の不動産価格に対する影響を考える上で重要で、着目すべき動向と言えます。

2022年に入ってアメリカの金融機関Freddie Mac(連邦住宅抵当貸付公社)の固定の住宅ローン金利30年物の金利は3%前後でしたが、その後上昇し始め、11月9日にピーク(30年物7.08%)を迎え、2023年2月1日には6.09%まで下落し、2月22日現在は6.62%へ反転しています(図1参照)。



また、中古住宅の販売(Existing Home Sales)は、2022年1月の6,490,000戸から同年12月には4,020,000戸まで、1年で約38%落ち込んでいます。(National Association of Realtors)(図2参照)。販売価格平均も2022年6月の$413,800から同年12月の$366,900と1年で11%下落しています。その差額は$46,900もあります(図3参照)。


【図2】 中古住宅の販売戸数


【図3】 中古住宅販売価格(中央値)


③日本の金利展望


日本においても、2021年8月頃から金利上昇は続いています。特に、日銀が2022年12月、従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大しました。この事実上の利上げとなる決定で、市場では長期金利が急上昇し、円高が進んでいます(図4参照)。

【図4】 フラット35融資金利(融資率9割超)


変動金利(適用金利)は、民間変動(基準金利)から各行独自の金利優遇幅が差し引かれて求められます(図5参照)。2023年4月には日銀総裁が植田和男氏に変わる予定です。当面は低金利政策を継続し、急な大きな変化がある可能性は少ないとみられているものの、いずれは金利政策の変更が行われる可能性は高いと言われています。上記②で触れたようにアメリカでは住宅ローン金利は上昇しており、日本でも住宅ローン金利が上がっていく可能性は十分あると考えられます。①で触れたように日本で金利上昇が起きると借入限度額の減少が発生します。


【図5】各行の変動金利(適用金利)

このため、物価上昇率など他の経済要因が異なるため一概には言えませんが、不動産市況に与える影響は大きいと考えられます。今後の住宅マーケットを読む上でも、4月以降の金利の動きは注目していく必要があるでしょう。



【論点.2】投資家の動向


①外国人投資家における動向


カントリーリスクなどを考慮してグローバルに大きな投資資金は動いています。日本の経済動向に関わらず、他の国の投資損失の穴埋めのために、日本株が売られ、また、他の国の投資損失を防ぐために、避難先として日本株が買われることもあります。


そのような海外投資家の目線で見ると、アジアでは北京、上海、香港、シンガポール、台北、ソウルのコンドミニアム価格が東京都心のマンションと比較されますが、カントリーリスクや完全所有権が取得できること等から東京のマンションには割安感があります。最近は若干円高傾向ですが、2022年の大幅な円安時にはお買い得感が大きかったと言えます。最近ではマンションの管理組合においても外国人の方が一定勢力になってきています。


このような外国人投資家の存在は、都心マンションの価格を上げる方向に影響します。


②イールドギャップの動向


イールドギャップとは、借入金利と投資物件の利回りの差のことを言います。借入金利が上がれば、イールドギャップが縮小し、投資家は投資に慎重になるでしょう。



まとめ


論点1、2で住宅ローン金利、投資家の目線で予測を立ててみました。最後に都心部住宅マーケットでの動向予測と展望をまとめていきます。


日本の都市部において働き方改革による在宅勤務の増加、コロナの収束後のオフィスや住宅のあり方は、まだ不確定要素が多いと言えます。ただ住宅ローン金利が上がれば、ローンで買える物件価格の限度額は下がるため、日本におけるパワーカップルが買える物件の価格は下がるでしょう。一方でマンションの供給側から見れば、地価上昇し、建築費が高騰しているにもかかわらず、2023年はマンション供給が多くなることが予想されており、逆にマンション価格が下方になるような影響がでてくる可能性があります。同じ事は中古マンション市況にも言えそうです。


しかしながら外国人投資家にとって東京都心部の物件はお得に購入できるということで、外国人の購入が増えてくる可能性も十分考えられます。外国人投資家の購入が増えてくれば、都心部のマンション市況は引き続き高額が続く可能性があり、その場合は下落しないという展望も考えられます。


以上のような多くの要素が絡み合い、2023年度の都心部住宅マーケットは昨年度以上に読みにくく、「日本の住宅ローン金利」と「外国人投資家の動き」の2つが鍵を握ってくるといえます。不動産売買を検討する際には、これらの2つの動きを見ながら、エリアに精通した不動産のプロフェッショナルへ相談するのが良いでしょう。


Writer

村木 信爾 氏

不動産鑑定士、不動産カウンセラー、FRICS、京都大学法学部卒、ワシントン大学MBA。信託銀行にて、不動産鑑定、仲介等の業務に携わった後、現在、大和不動産鑑定㈱シニアアドバイザー、明治大学ビジネススクール兼任講師(元特任教授)、PROSIL代表。近著に『不動産プロフェッショナル・サービスの理論と実践』(清文社)2022.6刊、がある。

売却相場

お所有のマンションが現在どのぐらいで売却できそうか、実際に販売されている物件の販売価格より相場を調べることが出来ます。

販売事例検索

北海道・東北
甲信越・北陸
近畿

本社インフォメーションデスク

0120-988-264

受付時間 10:00AM〜6:30PM
年中無休(年末年始を除く)

キャンペーン・サービス